Ultra Light Hiking Goods  -Packing-
2014.10.29更新
登山装備の軽量化トップ > 装備別:登山装備の軽量化 > スタッフバッグとパッキング

 登山装備の軽量化で、最後の詰め登山ザック(バックパック・リュックサック)です。
 そして、ザックを使うなら必ず習得するべきなのが、パッキング術でしょう。 このコンテンツは登山装備の軽量化について書いていますが、普通の登山でも極めて重要な技術です。 すでに理論や方法論は確立しており、誰でも工夫できるところですが、次第に大雑把になってしまう部分でもあります。
 前半は、パッキングに使うスタッフバッグ類について。軽い製品を選び持参する袋を減らすことで荷物の軽量化を狙う方向性を紹介します。 後半は、ウルトラライトなザックにおいて、如何に荷物の軽さを維持し、さらに軽く感じられるパッキング方法について触れたいと思います。

もくじ

ザックの容量
過剰な機能はザックを重くする
軽けりゃいいってものじゃない
ザックと寸評1:ブラックダイヤモンド RPM
ザックと寸評2:グラナイトギア ヴァーガ
ザックと寸評3:ゴッサマーギア ゴリラ2012
パッキングの基本をおさらい
まずは末端の小物から考える
ザックの防水対策はドライパックを用いる
スタッフバッグはシンプルなタイプを選ぶ
筆者のパッキングの具体例と反省点
パッキングの手順

パッキングの基本と、トラディショナルなテント泊縦走での例

 あらためて、基本をおさらいです。登山ザックのパッキングの基本概念図はこんな感じ。この手の図は、意外なほどウェブ上に少ないと思います。 パッキングを構成するにあたって重要なのは、装備ごとに使用頻度と比重(体積に対する重さ)を考えることです。


・重いものは背中側、軽いものは表側
 どんなスタイルでも変わらない不文律で、重いものを背中側から離す理由は思い付きません。
・重いものは上・軽いものは下
 人によって見解が異なります。私は『重いものを上方へ集めると、振り子の原理が働き岩場で危険』といった単純意見には否定的です。 もちろんメイン気室がスカスカなのに雨蓋に沢山のものを入れるのは愚の骨頂。 ここでの「上方」とは、肩から腰の範囲での「上のほう」であって、肩より上のほうへ重量物を置くのは危険です。 それより『滑落の危険がある場所で重心を下げる』という意見のほうが真っ当でしょう。一理あるように思えます。 いずれにしても、荷物が軽ければ問題とはなりません。難しく考えるより、背中側(身体側)へ重量物を集めるほうが大切です。
・よく出すものは上側、あまり出さないものは下側
 これも注釈が必要でしょう。まず、地図類は、ザックの中には入れません。 これらをザックを降ろさずに取り出せないようでは、遭難予備軍です。飲料水や行動食も同じで、その度にザックを降ろすのは時間と体力の無駄と言えます。 テント泊縦走の行程中なら、レインウェアや着替えは雨蓋やフロントポケットに入れておけばよいわけで、メイン気室を開けないほうがスマートです。 つまり、「よく出すものは上側」というのはその程度の優先度です。メイン気室にあって行程中に出すもの、ストーブやクッカー類くらいでしょうか。
・柔らかいものは外側、硬いものは内側
 挙げておいて何ですが、留意するのが稀です。硬いものが酒瓶とかなら、持参する時点でアウト。詰め替えましょう。 まぁ、一眼レフや携帯電話、ハンディGPSあたりなら理解できます。
・左右の重量配分は均等に
 基本ですが、細かく考え出すと非常に難しいことです。要点となるのは、上・中・下の各層で、「下層の左側・中央・右側」のように縦割り区画を設けないことです。

 テント泊装備では、だいたいは以下のようになるのがオーソドックスではないでしょうか。 これに各人がアレンジを加えてオリジナルベストを見出しているかと思います。
雨蓋:ファーストエイドや小物
上層:行動着やレインウェア
中層:食料やクッカー類
下層:シュラフやテントなどの幕営用品と着替え

まずは末端の小物から考える

 登山ザックのパッキング方法をいくつか見ると、どれも『ザックの底にはテント泊用品を…』というように、主だった装備から解説が始まります。 それ以外に関しては、『空いた隙間には小物などを詰めて…』といった程度の説明で一括りにされているのが一般的。随分と適当です。 しかし、これではダメです。

 パッキングの概要を掴むなら大丈夫かもしれませんが、およそ実践的ではないし、いろいろと問題があります。 まず、漠然とした「小物」という表現には、余計な荷物を持参してしまう落とし穴が潜んでいます。 そして、メインコンパートメントの隙間に入れる小物って何でしょうか。そんな場所に仕舞ったら素早く取り出すのは無理ですし、ザックの中で行方不明になりそうです。 装備を隈なく軽くしようと思うなら、登山用の必需品や小物自体と同じく、収納する容器・袋にも気を配りましょう。
 で、その小物について、本当に末端のものからパッキングを考えましょう。 例えば、ガスストーブ本体、トイレットペーパー、一日分の行動食、小銭、カメラのバッテリーなどです。

<軽量化に際して、持参してはいけないスタッフバッグ>

 製品に付属するスタッフバッグには、オマケ的要素が強いものもあります。 これらは概して容量が小さく、全体で見れば重くなるので、持参する意義はありません。 以下の表には、私が「必要」と判断する装備も含まれます。ただし、これらに付属するスタッフバッグ類は絶対に持参しません。 『必要と言い切れない袋は、持参しない』ほうがよいです。



製品系統製 品 名 (公称容量) 重量 
製品付属・小袋系
小容量・重い
 チャック袋に置換を推奨 
【アクシーズクイン】GORE-TEXレインスパッツ 付属袋12g
【カスケードデザイン】パックタオル・ウルトラライト(S) 付属袋6g
【シートゥーサミット】ヘッドネット 収納袋13g
【モンベル】B.D. U.L.スリーピングバッグカバー W&L 付属袋9g
【プリムス】P-153 ウルトラバーナー 付属袋8g
【The NorthFace】インパルスJKT 付属袋4g


<小物の整理には、チャック袋が最適>

 ここで活用したいのが、チャック付き小物袋(チャック袋)です。 チャック袋は、
・レジ袋のようにガサガサ音がしない ・潜水を除けば、完璧な防水性能を有する
・単価が安い ・繰り返し使える
・サイズも豊富 ・簡単に手に入る
・超軽量 ・中身の確認もできる
・一般の認識より耐久性が高い ・冬季も使える-30℃の耐冷温度

 …と、非常に優れたアイテムです。ホームセンター、文具店、ドラッグストアなどで普通に買えます。 選ぶうえでのポイントは、厚さが0.08mmのものを選ぶこと。パッケージの裏に必ず書いてあります。
 廉価な製品には厚さ0.04mmのものがありますが、耐久性が大きく劣ります。 0.04mm厚だと、例えば中に入れた切符が袋の隅に当たるだけで、簡単に裂けてしまいます。 0.08mm厚のチャック袋を使い捨て感覚で長らく使ってますが、完璧とまでは言えないものの、耐久性に大きな不満は生じていません。

<スマートフォン>
<カメラのバッテリー>
<ヘッドネスト>
<財布と行動食>


 ところで、一日の行程中に何度もチャックの開閉を繰り返したり、高頻度でバッグから取り出し・収納するような用途に使うと、0.08mm厚のチャック袋でも問題が生じることがあります。 私の実感するところでは、マップケースと、ゴミ袋の用途のときです。あくまで耐久性が欲しいなら、ALOKSAKの高級チャック袋をお勧めします。 なお、財布も該当しますが、多少の摩耗や穴開きが大きな問題となる部分ではないため、普通のチャック袋を使っています。

 もちろん何でも入れればよいわけではなく、サンダルなど濡れてもよいもの、始めから防水のもの、そのままザックなどに入れられるものは、チャック袋に入れる必要はありません。

<袋に入れない選択 ― "縛る">

 ここで、クッカーをどうしようか考えると、チャック袋では無理があるのが分かると思います。 私の場合は、滑り止め用のマットで縛っています。 格子状にデコボコしたシートで、100均やホームセンターで小さいサイズも売られています。 これを適当な幅・長さに切って、クッカーをねじ結びで縛ります。 すぐにボロボロになるかと思いきや結構な耐久性があって、劣化してベタ付いたり、砂まみれになっても滑ったりせず、なかなか優秀です。 素材が素材なのでかなり軽く、エバニューの平型クッカー1型を縛るために2cm幅・60cmで十分。付属のスタッフバッグが16gなのに対して、たった5gで済みます。

 長さはクッカーに合わせて調整してください。 バンドをクッカーに巻き付けて、一周半できる長さがあれば、十分でしょう。 この状態で、かなり適当にザックへ入れていますが、意図せず外れたことはありません。
 一方で、すべり止めシートを使うのではなく、マジックテープ・バンド(面ファスナーの帯)を使う手もあります。 手間の少なさでは優れますが、あまり軽くないので注意しましょう。

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ザックの防水対策は、ドライパックを用いる

 ここで、ザックの防水対策について。新品のザックは、生地の内側にウレタン・コーティングが施されているので、けっこう防水性があります。 でも、ポリウレタンは経年劣化が避けられず、ザック自体の防水性能はいつか限界を迎えます。 この経年劣化のたびにザックを買い替えられるなら越したことはないのかもしれませんが、普通は何らかの防水対策を施すと思います。
 古典的手法はザックカバーですが、背中側からの浸水は防げないため、汚れ防止の意味合いが強いアイテムです。 軽量化を狙うなら装備から外すべきです。
 それに対して、ドライパックをライナーとして使えば、ほぼ完璧な防水性を確保できます。 そして、ドライパックはライナー以外にも色々と使えます。 例えば、設営後に使わない道具を入れてシェルターの外へ出せば、中を広々と使えます。 就眠時に足先の保温力アップや半身用のシュラフカバーとしても使えるでしょう。
 ここで、大雨のときに絶対に濡らせない装備と、あまり濡らしたくないもの、実は濡れても問題ないもの、 使用後に濡れているもの、の4つくらいに全装備を振り分けて考えてみましょう。

●絶対に濡らせないもの
 ダウン系のシュラフや防寒着、予備の着替え、剥き出しの食料、地図など。濡れたら致命的。
●濡らしたくないもの
 紙幣、携帯電話、カメラなど。かなり困るけど、濡れても死にはしない。
●濡れても問題ないもの
 ザック、水筒、クッカー、燃料ボトル、マットレス、コンパスなど。水場にドボンしてもOK。
●使用後に濡れているもの
 シェルター、レインウェアなど。雨が降ったあとに収納すると隣りのアイテムを濡らしかねない。

 「濡れないに越したことはない」と考えるとほとんどが該当しますが、濡れたら致命的・登山の成功に関わる装備は意外にも少ないのです。 また、トラディショナルなパッキングにおいて、テントとシュラフを隣合せで詰めることはあまり合理的ではないのが分かります。 ただし、大型のドライパックはけっこう重いので、よく吟味するべきでしょう。ただ、まだ詰められていない部分でもあります。

製 品 名実測重量公称重量
 【GraniteGear】eVentウーバーライトドライサック 18L 不明 公称 21g 
【Sea to Summit】ウルトラシルナノドライサック 20L不明 公称 36g 
【Sea to Summit】ウルトラシルドライサック 20L不明 公称 50g 
【GraniteGear】eVentシルドライサック 25L 実測 71g  公称 56g 
【Sea to Summit】ウルトラシルナノドライサック 35L不明 公称 46g 
【Sea to Summit】ウルトラシルドライサック 35L実測 84g 公称 65g 
【Sea to Summit】ウルトラシルパックライナー 50L実測 91g 公称 74g 

 Sea to SummitにはUltra-Silシリーズより軽い「Ultra-Sil Nano」があります。 主素材に15Dナイロンを採用していて、さすがに耐久性に難がありそうなので手を出していません。 それにしても、公称重量はサバを読み過ぎではありませんか。公称重量を1.25倍すると、概ね実測値ですね。 けっこう重いと書きましたが、上表の通りに、ある程度は軽い製品があります。 このため、完全防水のザックには重量的な優位性がないことが分かります。同型・同機能性で、防水付与による重量増が50g程度になるまで、その手のザックは手を出さないほうが無難でしょう。

 私がメインで使っているのは35Lと50Lのもの。満載でなければ、ザックごと入るサイズです。 タープやフロアレスシェルターで幕営するので、地面の濡れから荷物を守りたいわけです。 幕営中はシュラフや防寒着を使っている最中なので、防水を考えることはありません(シュラフはカバーで防御)。 このとき「絶対に濡らせない装備」は食料と予備ウェアくらいになるのですが、私は食料をチャック袋にパッキングしています。 つまり、ザックを濡らさないためだけに、この大きさのドライパックを使っていると言えなくもないわけです。 この大きさが優位なのは、使わない装備から足元のマットを作るときに、ザックごと入れられて就眠中の形崩れを防げることです。 でも、もっと小さいドライパックでも大丈夫な気もします。

 ただし、実際に雨に打たれると非防水の装備は水気を帯びます。 機能的に問題なくても、濡れた分だけ確実に重くなります。 このときには、ザックの荷物が水受けのような形になっていると余計な荷物(水分)も背負い込むことになります。 非防水の装備の表面積を少なくするためにも、メイン気室の全体をドライパックで満たしておくことは意義があると思います。

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スタッフバッグは、ざっくりとまとめるほうがよい


<持参するスタッフバッグの個数を減らす>

 次に、スタッフバッグの数を少なく済ませるのがポイントです。
 メインコンパートメント全体を覆うドライパックを除くと、どう細かく見てもスタッフバッグの数は3〜4枚ほどで済むはずです。 私の最近の傾向では、少なくともシェルター(テント)、シュラフ&カバー、レインウェア上下あたりは、スタッフバッグには入れません。 これらは使用後に濡れているか濡れても問題ない装備なので、メイン気室のドライパック外やポケットに軽く畳んで押し込んでます。
 このため、メイン食料でチャック袋1枚、その他でスタッフバッグ1枚しか使いません。 この「その他」には、行動食からコーヒー類、ヘッドライトから予備電池、歯ブラシや携帯電話まで、細々したものを何でも入れてしまいます

 重要なのは、ザックやウェアのポケットが「スタッフバッグ相当」の役割を果たすこと。 メイン気室の外側では、防水性の確保に気を付けるか、あるいは濡れても問題ないものを外側に出すように考えれば、 前述の小容量のミニケースを持参しないことと併せて、相当数のスタッフバッグを減らすことができます。

<シンプルな巾着タイプが、最も使いやすくて軽い>

 自分で購入したものや製品に付属のものを秤に乗せてみると、結構な重さがあることに気付きます。 特に、風変りなスタッフバッグは重く、実用性が疑わしいものもあります。例えばコンプレッション機構を備えたものや、ファスナーで開閉できるものなどです。 明確な目的がないなら、メッシュタイプもお勧めしません。 ドローコードで締めるだけのシンプルなタイプのほうが軽く、使い回しが利きます。 つまり『より軽い製品に替える』軽量化手法です。
 なお、スタッフバッグでは、ドライパックと違って地面に敷いて使うようなことがないため、生地系のものは頑丈さは求めなくても大丈夫です。 軽量化を始める前から使っているスタッフバッグですが、破損した試しがありません。 スタッフバッグの代表格、グラナイトギアのエアバッグは30Dシルナイロン製ですが、これより薄い素材でも問題ないでしょう。 ドライパックの中に入れて使うなら、TNFのホワイトスタッフバッグ・シリーズはかなりオススメです。

様々なスタッフバッグ。

製品系統製 品 名 (公称容量) 実測の容量と重量 
30Dシルナイロン系
まぁまぁ軽くて防滴
シームありなら防水
滑りがよくパッキングが楽
【GraniteGear】エアバッグ#1 (2L)2.1L・14g
【GraniteGear】エアバッグ#2 (3L)2.8L・16g
【GraniteGear】エアバッグ#3 (5L)4.7L・19g
【GraniteGear】エアバッグ#4 (7L)7.0L・20g
【ThermaRest】ネオエアースタッフサックS1.6L・14g
15Dパーテックス系
かなり軽量・撥水のみ
【The NorthFace】ホワイトスタッフバッグS (2L)8g
【The NorthFace】ホワイトスタッフバッグM (3L)9g
【The NorthFace】ホワイトスタッフバッグL (4.5L)4.1L・10g
 キューベンファイバー系 
超軽量で防水でも高価
【LocusGear】Khufu CTF3 付属袋4.0L・8g
【HyperliteMoutainGear】CF8 Cuben Stuff Sack M4.3L・11g
高級チャック袋
軽量・完全防水・防塵
・透明で防臭付きも
地図・食料・ゴミ袋に最適
【LOKSAK】OPサック 228×254mm(平型)・15g
【LOKSAK】OPサック 320×500mm(平型)・42g
普通のチャック袋
超軽量・完全防水
透明で安価だが使い捨て
末端の小物整理に最適
チャックつき小物袋 7×10cm・0.08mm厚97ml・1.5g
チャックつき小物袋 8.5×12cm・0.08mm厚173ml・1.9g
チャックつき小物袋 10×14cm・0.08mm厚272ml・2.8g
チャックつき小物袋 12×17cm・0.08mm厚536ml・3.8g
製品付属系・イロモノ系
重さと要相談
【Patagonia】スリリングショットXS 付属袋5.1L・21g
【モンベル】U.L.スパイラルダウンハガー#3 付属袋3.1L・23g
【モンベル】U.L.スパイラルダウンハガー#5 付属袋2.5L・20g
【HOBO】ダブルブッキングパックM (5L)5.7L・62g
※実測容量の算出方法:
チャック袋は、満水状態でチャックを閉めたときの重量から自重を引いて算出した(水1g=1ml)。
スタッフバッグは、蚕繭型の梱包緩衝材「ブランフォームBFP3を用いた。 直方体の容器で擦り切ったときの個数と満水量から、[303個で7,223ml]、つまり[42個で1,000ml]を基準として算出した。 本当は、精密BB弾かパチンコ玉あたりを使いたかったけど、個人ウェブサイトレベルでは無理。


 容量と重さを量ってみると、グラナイトギアのエアバッグ・シリーズは、製品に付属するものやイロモノ系と比べれば健闘していると言えます。 しかし、ダウンウェアやシュラフの封入に使われるPertex Quartumを採用したノースフェースのホワイトスタッフバッグ・シリーズには及びません。 普通のシルナイロン系スタッフバッグはシームシーリングされていないため、シルナイロンといっても防水とは言えず、Pertex Quartumは滑りもよいため、エアバッグ・シリーズに優位点が見当たらないのです。

 防水バッグでは、やはりキューベンファイバーを採用したスタッフバッグは超軽量なことが分かります。 防水性能に違いがありますが、普通のチャック袋(完全防水)より容量あたりの重さが優位になる唯一のスタッフバッグ素材と言えます。 なお表では、ローカスギアに比べてHMGが重めに思えます。 でも、Khufu CTF3 付属袋はシームなしなのに対して、CF8 Cuben Stuff Sackはシームありの防水仕様です。 シームの重さを鑑みれば妥当な重量差でしょう。

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どこに何を入れるのが最善か、しっかりイメージする

 小物をチャック袋に入れたら、自分の行動パターンとザックの構造を照らし合わせて、しっかりとイメージしておきましょう。 ザックは透けて中を見られないため、想定と実際が往々にして違いますが、ここでイメージできているかどうかは、登山の真っ最中のパッキングにおいて重要な意味を持ってきます。
 「イメージできたら、ウェブで調べものなんてしないっての」と言われそうですね。ご心配なく。 実際の失敗例も含めて、図化してみました。

≪2005年夏季縦走のパッキング模式図(失敗例)



 上図が、2010年夏季 北アルプス5泊6日単独縦走のときのパッキング例となります。バックパックはブラックダイヤモンドのRPM(25L)、タープ&シュラフカバー泊です。 軽量化装備の一応の集大成ということで挑んだ縦走でしたが、パッキングに関しては反省点が多いです。 詳しい装備リストはこちらを参考してください。 このパッキングを機能性から見れば、それほど悪くない完成度だと思います。事実、登山に大して問題は生じませんでした。 難点を挙げるとすれば、雨露で濡れたシェルターを乾燥せずに収納している関係で、隣にあるシュラフまで濡れることですかね。 それよりも軽量化に際して問題なのが、7枚ものスタッフバッグを使っていることです。大外のドライパックを含めれば8枚です。

≪2013年夏季縦走のパッキング模式図(成功例)


 上の図が、実践上で最高の出来栄え。2013年夏季 北アルプス9泊10日単独縦走のときのパッキング模式図です。 バックパックはゴッサマーギアのゴリラ2012、フロアレスシェルター泊です。⇒装備リスト
 配置上の転換として、シェルター・レインウェアをドライパックの外に出したことが挙げられます。 こうすることで、雨露で濡れた装備の所為で隣りまで濡れることはありませんし、フィールドで真っ先に取り出したいものに素早くアクセスできます。 ハイドレーションを使い一日分の行動食をポケットなどに入れておけば、普通の3シーズン登山で「取り出したいもの」は、大まかにはレインウェアとファーストエイドだけでよいと思います。 他のパッキング方法論で、ヘッドランプなど何でも小物を雨蓋に入れるように解説されることもありますが、肩より高い位置に沢山のものを入れるのは良いことではありません。

 構成上の転換に挙げられるのが、シェルター・シュラフ・フリースジャケット・レインウェアの収納にスタッフバッグを使わなかったことです。 そもそもスタッフバッグの役割は、防汚防水を除くと「荷物を区分けする」ことに他なりません。 「シュラフ」とか「レインウェア」といった単一アイテムにスタッフバッグを1枚使うことは、あまり合理的ではないのです。 何だかんだ言ってスタッフバッグに収納するのは面倒であり、それがゆえに素早く取り出せないこともあります。 「押し込む・畳むだけでは本当にダメか」、よく考えてみましょう。

 なお、図ではマットレスを外付けにしていますが、縦走中盤に移り食料の体積が減ってきたらマットレス内蔵に切り替えました。 このように、パッキングというのは、登山中に流動的に変化させるものです。 例えば縦走終盤は、食料の体積がゼロに近づいてくるため、ザックのコンプレッション機構を活用するとともに、フリースジャケットはザックのフロントパネル側へ移動しました。 最終日はザック底に眠っている着替えをトップリッドへ移動し、シェルターはフロンパネルとドライサックの間に入れてしまいました。

 一方で、絶対に濡らせないはずの『ダウンシュラフを水から守る』という観点では、大外のドライパックにすべてを委ねているわけで、 一定のリスクがあることも承知のうえで構成しています。 トラディショナルな登山では「リスクは避けるもの」なのに対して、UL登山では「リスクは取るもの」といったところでしょうか。 一応、防水シュラフカバーに入れたまま収納しているので、仮に漏水が生じたとしても、シュラフまで濡らす可能性は低いと考えています。

≪机上論と実際 ― システマチックに、こだわり過ぎないこと≫


 これは2013年の派生。私の使う食料袋は、ALOKSAKの大型チャック袋なので、固形容器と違って少しは形に融通が利きます。 中身もアルファ米と乾燥スープだから麺のように折れるって概念もありません。
 そうこう考えて、アルファ米って比重的には結構重めなので、背中側に寄せて構成してみました。 縦走してみての感想は、メンドクサイです。 なぜって、アルファ米の袋を平らに均して入れるには、ザックの背中側を地面に寝かせながらパッキングしなければなりません。 普通にザックを立ててしまうとザザァ…って音とともに米が流れるわけです。模式図を見ても、正面図と側面図が同じ直線で区切れていない時点で、複雑なのは明白です。

 冒頭で挙げた、理想的なパッキング模式図に忠実に仕上げるなら…ですが、正直申し上げてやってられません。 確かに歩く最中は楽だったのかもしれませんが、そこまで劇的というわけでもなく。 このあたりが、パッキングの奥深さですね(悪い意味で)。こだわれば理想論に近づけられる。でも、実践上のベストとは言い難い。 それで具体例を挙げると、個人の妥協の産物って情報がスポイルされるので、みんな混乱するのでしょう。
 結論として、理想論を念頭に組み立てるのが鉄則ですが、あまりに徹し過ぎて逆に実践的でないなら、やはり無理があると考えるべきでしょう。 ここを無視したら、「装備ごとに比重を測る」とか無茶言いそうな自分が怖い。

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具体的なパッキング手順


<ULのパッキング流儀>

 今さら「ウルトラライト」と格好つけるほどではないと思いますが、王道とされるパッキング方法はあります。 ザックの構造によって、ベストな組み合わせや運用方法は変わるものなので、以下を参考にしつつオリジナルベストを目指してください。

1.ULザックとマットレスの組み合わせ

 背面パッドがないUL系ザックなら、はじめに円筒状に丸めたマットレスを入れるのが王道です。エアーマットレスを使うときや、マットを外付けするなら、この手順は省きます。
利点1:ペラペラのザックの形が付くことで、パッキングしやすくなる
利点2:ザックの背面パッドが要らない分、荷物が軽くなる
利点3:マットレスが、ザックのフレームと同じ役割を果たす
利点4:マットレスを外付けしないで済む


 UL系ザックにおいて、背面パッドをマットレスで代用すると聞いても、当初は物凄く抵抗がありました。 だからこそ、選んだザックがBDのRPMだったわけです。 でも、GGのヴァーガを使って教科書通りのパッキングで縦走してみた印象では、背負い心地に問題ない・普通に快適なのが正直なところです。 ドイターのように背中の蒸れ防止に特化した構造を以ってしても、結局は蒸れます。快適や便利で重くなるなら…その機能を捨てます。

 ただし、欠点や注意点もあります。
 普通のザックでは、ベルトを緩めてからパッキングを始めて、最後にコンプレッション機構を使って絞るという手順を取ります。 しかし上記の方法だと、マット同士の滑りが悪いため、あとからコンプレッションできません。 コンプレッションできても、背中側を絞ると、断面積が変わらずに同時に横幅が広がるようになります。
 この打開策として、始めにマットレスを入れるときに、出来るだけ小さな筒にしてからパッキングを始めることです。 パッキング中に容量が足りなくなったら、少しだけマットレスの筒を大きくするようにします。 このままでは容量が足りず筒を大きくする必要があるか、ないかは、経験で導き出すしかありません。

 派生として、丸めて筒状にするのではなく、折り畳んで板状にして背中側に入れるという手もあります。 サーマレスト Zライトのような折り畳み前提のマットレスなら相性がよいです。 シート型だと分厚いマットレスは折り畳めませんし、薄いものでも折り目が付いてしまうのが難点です。筒状に入れるのと違って、最後にコンプレッションできます。

2.ドライパックを入れる

 次に、ドライパックを入れます。ここは細かいことはありません。 入れるだけです。ただ、このあとに荷物を詰めると動かせなくなるので、向きとかが気になる几帳面な方は、この時点で整えておくとよいでしょう。
 ちなみに、ドライパックのサイズは、ザックの容量と比べて同じか、一回り大きいくらいがちょうどよいです。 写真では、40L相当のザックに、50Lのドライパックを使っています。まぁシンプルで軽いドライパックの選択肢は限られるので、仕方ないでしょう。 最終的には自作かなぁ〜と考えてしまう瞬間です。


3.シュラフなどを"そのまま"入れる

 ここからが真骨頂?予備の着替えやダウンシュラフを、スタッフバッグに収納せずに入れます。 利点はスタッフバッグ分の軽量化に繋がるだけでなく、ザックの容積を最大限に活用できることが挙げられます。 小さめのスタッフバッグがカチカチに硬くなるまで装備を詰め込んでしまうと、他のバッグを入れたときに余分な隙間が生じてしまうからです。
 私の場合は、まず一番下に、着替えとタバコを入れて、適当に平らに均します。 この着替えは登山中ではなく、登山口まで・下山後に街着として着る(万が一に備えて登山中でも通用する)ものです。 下山日を除くと、通常はドライパックの中から出てくることはありません。登山中に使う着替えがあるなら、それらは収納場所が違います。
 タバコのほうは…一日に一箱を吸うほどヘビーでもないので、必要に応じてテント場に着いてから取り出す感じです。 蛇足ですが、タバコって丸めたダウンシュラフより比重が軽い印象です…。
 続いて、ダウンシュラフを入れます。面倒なのと防水性を向上させる意味もあって、シュラフカバーに入れたまま収納しています。 そのままのダウンシュラフは物凄く嵩張りますが、別段の圧縮など施さなくても、下層に入れれば勝手に潰れるという考え方です。 端っこからズルズルと入れてもよいのですが、それなりに手間なので軽く畳んでから押し込むとよいでしょう。 人によっては、他にも幕営用品があると思います。それらもここで入れておきます。
 同じように、幕営地や山小屋に着いてから使う防寒着も、その上に入れます。

登山のパッキング手順3
<予備の着替え>
登山のパッキング手順4
<ダウンシュラフ>
登山のパッキング手順5
<フリースジャケット>


4.ハイドレーションパックと…臨機応変アレコレ

 ハイドレーションを使うなら、この時点で、ハイドレーションパックはザックに装着しておきます。 当然ですが円筒状に丸めたマットレスと、ドライパックの間に位置するように収納するのが鉄則です。 ただ、防寒着と水筒に関しては、臨機応変なことが多いです。
 例えば防寒着。早朝のテント撤収のときや小屋を出るときは、まだ寒いので、防寒着を着ていることも少なくありません。 さすがに暖かくなるまで待っていられないので、そのまま行動して、暑くなってきたところでザックの上層に仕舞い込みます。 そして、ハイドレーションパック。テント場ならともかく、道中の補給が果てしなく面倒くさい。 なぜって、水筒に水を補給するたびにパッキングをやり直すことになるからです。それゆえ、ドライパックを閉じた上にそのまま置くことも少なくありません。

5.残りの"まず行動中に取り出さないもの"をドライパックに詰める

 ここで、やっとスタッフバッグの登場です。 このスタッフバッグには、その日に食べないチャック袋入りの行動食、スティックコーヒー、サプリメント、カメラのバッテリーなど細々としたものが全部入っています。 チャック袋によって、中で最低限の区画化は済んでいるわけですから、[行動食用]とか[テント泊用品]といった風に、別のスタッフバッグを用意する必要はないです。
 押さえておくポイントは、このスタッフバッグの中身は、使う頻度がほぼ同じであることです。 私にとっては、挙げたアイテムはすべて、幕営指定地に着いてから出せばよいものばかりです。

バッテリーなど、「今日中に電池切れの可能性あり」なときは、1つだけレインウェアのポケットに出しておきます。 スティックコーヒーなども同じで、一日の行動中に沸かして飲むのは多くて2杯まで。だから、その分だけ別に出しておきます。 あと、バッテリーは濡したくないものに分類される一方で、スティックコーヒーは濡れても問題ないことにも気を配ります。

登山のパッキング手順7
<メインの食料>
登山のパッキング手順8
<クッカー>
登山のパッキング手順9
<FA・燃料ボトル他>


 ここからはマニュアル通り。メイン食料の入った大きいチャック袋を中央に置いて、クッカーのセット、燃料ボトル、スキットル、ファーストエイドキットなどを入れます。 まぁ実際とパッキング模式図が合わない部分ですが、何たって適当ですから。 一応は、アルコール燃料とFAキットの比重が重いので、背中側に置くようにしたほうがよいでしょう。写真はそのようになってませんが…。

7.ドライパックを閉じて、レインウェアを置く

 ここまでで、濡らしたくないものは終わり。ドライパックを閉じます。
 軽く畳んだレインウェアの上下を、その上に置きます。左の写真は、見せるために懇切丁寧に畳んだ例で、実際はもっと適当です。 シュラフや防寒着と同じように、スタッフバッグには入れません
 レインウェアは、使用後に濡れている装備であることに疑念の余地はないでしょう。 行動中に素早く出したいものとしても代表的です。 だからこそ、ドライパックの外側かつ、ザックの最上段に配置するほうが合理的です。

 でも、それを鵜呑みにして、スタッフバッグに入れた状態で雨蓋に収納する人が多いように思えます。 これに大容量の雨蓋(トップリッド)って条件が加わると、歩行時にバランスを崩しやすくなります。 雨蓋にコンプレッション機構を備えたザックは稀で、雨蓋の中でレインウェアが暴れるからです。 スタッフバッグに入れないことは、軽量化云々より、素早く取り出し・収納する、無駄な揺れを防ぐ意味でも、要点となります。

 ちなみに、私はレインウェアの上に、ゴミ袋も重ねてます。この位置でなくても普通は大丈夫なんですが、行動中に携帯灰皿が満杯になることもあるので…(^^ゞ

8.メイン気室を閉じて、フロントポケットにシェルターを収納

登山のパッキング手順11
<シェルター>
登山のパッキング手順12
<フロントポケット>
登山のパッキング手順13
<収納した様子>


 ザックの正面にある、大型メッシュポケットにシェルターを収納します。 やはり、というか最早当然ですが、スタッフバッグには入れません。結露か雨で濡れる単層の生地ですから、行動中に濡れたって何ら問題ないです。 私のフロアレスシェルターの畳み方はかなり強引で、左上の写真をクリックすると説明がありますが、休日に起きない子供の布団を取り上げる様子(?)に酷似していると思います。要は、超テキトーです。
 最後に何となく長方形に整えたあと、メッシュポケットに収納しています。このとき、ペグも付けたままなので、メッシュ生地に刺さらないように気を付けてます。

 先に挙げたレインウェアと、シェルターの位置関係は、逆でもよいかもしれません。

 …と、ここまで具体例を挙げておいてアレですが、自立式テントだったら、どうしましょうかね。 私は所有していないので、考えるのも面倒ですが…。フライシートは、フロントポケットでよいと思います。濡れてますし。晴れれば勝手に乾くし。 でもテント本体は、地面側は濡れてますが、大部分は乾いているはずです。おそらく、テント本体用のスタッフバッグってのが必要になってくるのでしょう。 収納場所は、入れ物を小型のドライパックに切り替えて、メイン気室のドライパックの上、でしょうかね。

9.その他、細々としたもの

 私は、行動中に頻繁に取り出すものは、ハイカーズサコッシュに入れて携帯しています。それらは別ページで解説予定なので、ここではそれ以外を。

 まず、サポートポール(ストック)は、余程の岩場でない限り、手に持ったままです。 いざ収納となると、王道ですがサイドポケットに入れてます。
 この逆サイドには、防水のコンデジと、レイングローブを入れています。 レイングローブは、寒さ対策のほか、ゴツゴツした岩から手を守るために使うことが多いです。咄嗟に出して、すぐに仕舞いたいので、ここが定位置です。
 あとは、ピーカンで脱ぐことになったウインドシャツ。さすがにフリースやレインウェアはサイドポケットには入りませんが、UL系ウインドシャツなら楽に入ります。


 ちなみに、写真のザックはゴッサマーギアのゴリラ2012ですが、雨蓋に相当する位置のポケットが異常に小さいです。容積も去ることながら開口部が激狭なので、大きなもの・頻繁に出すものを入れる気になりません。 そう断ったうえで、ここにはヘッドランプと、ポールコンバーターを収納してます。
 ヘッドランプは、行動食と一緒にスタッフバッグに入れてもよいと思います。 でも私の場合は、当日の行動食類は前日のうちに出しておくので、翌朝このスタッフバッグを開けないのです。よって、パッキング完了の段階で、最後にファスナー付きポケットに入れています。 ポールコンバーターも同様で、シェルターを畳むのはメイン気室を閉じたあとだから、設営に必要な道具を仕舞う場所が他にないのです。

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