Ultralight Goods for walk along the peaks of Alps
2010.8.20更新
 ここでは、軽量化したテント泊(正確にはタープ泊・ツェルト泊)装備で、槍穂縦走を含めた 5泊6日の北アルプス登山に行った際の体験談を紹介している。 ちなみに初北アルプス・初縦走・初単独行・初テント(タープ・ツェルト)泊である。 軽量化の軌跡についてはこちらを参考にして欲しい。
<登山行程>
日程:2010.8.3〜8.8(5泊6日)
人数:一人(単独行)
天候:おおむね晴、一部で霧
上高地 → 岳沢小屋 → 前穂高岳 → 奥穂高岳 → 涸沢岳 → 北穂高岳 → 南岳 → 中岳 → 大喰岳 → 槍ヶ岳 → 西岳 → 大天井岳 → 常念岳 → 蝶ヶ岳 → 上高地

登山装備の軽量化(総論)

 タープ泊・ツェルト泊登山での軽量化とは、究極的には移動時の快適さ・スピード・安全性を最優先し、 かつキャンプや食事の楽しさ・利便性を妥協し、妥協点には工夫で何とかすることに他ならない。
 例えばMSR イーウィングでタープ泊したため、テント泊と比べて、設営・撤収の手間や耐候性、快適性、プライバシーの確保の点では大きく劣った。 食事はアルコールストーブでアルファ米雑炊。レパートリーは乾燥スープの種類が違うだけだ。
 その代わり、山行中は快適の一言。涸沢岳〜北穂高岳、北穂高岳〜南岳の大キレットでは、クサリ、ハシゴと岩場の連続だが、 体の重心を動かすのが楽で取り回しがよく、八ヶ岳で不安だった膝のトラブルも起きなかった。 テント泊はもちろん小屋泊、日帰りと思われる誰よりも早く動けたし、「それでテント泊?」と休憩中の話でも皆から驚かれた。 キャンプ場での快適性もテントには劣っただろうが、毎晩200%越えの山小屋泊より、はるかに快適だったはず。
 よく言われることだが「あると便利」を言い出すと際限なく重量が増えていく。 どこまで軽量化しても、「あると便利=不要」の原則は何ら変わらないのだ。 そして状況が許せば、更なる軽量化も余裕で可能である。例えば今回、レインウェアは不要だった。つまりタープ・ペグ・ガイラインも不要。 コーヒーやウィスキーなんて以ての外。これだけで、まだ1kgは落とせる。ま、反省点は後述するとして。
 『あなたは何をしに山へ行きますか。それがないと本当に山へ行けないのでしょうか。
今回は初めて軽量化装備(一応の集大成)で登山したためか、「原点回帰」をしみじみ感じた。

装備一覧と反省点・改善点

<パック>
バックパック 【ブラックダイヤモンド】RPM  645g
ボトルケース 【シールライン】ウォーターボトルポケット  56g
防水パック 【シートゥーサミット】ウルトラシルドライサック35L  65g            計766g

 ここは、まぁ及第点である。
 メインのブラックダイヤモンドのRPMは、ベストチョイスと言っても過言ではない。 容量・重さ・体の負担軽減・使い勝手がこれほど高次元でバランスしているバックパックを、他に知らない。 公称容量25Lだが、どう見てもそれ以上が、このページの道具と6日分の食料と燃料が、予備入れても余裕で入った。 これより軽いザックは、ほぼすべてアタックザックで、ショルダーハーネスはペラペラ。逆にハーネスと背面の作り込みを重視すると、 重量は1kg(1,000g)以上がほとんど。これでも肩が痛い・疲れるなどのトラブルは一切なかった。
 シールラインのボトルケースは、マップケース・タバコ・携帯灰皿・行動食を入れていた。 前穂高岳・槍ヶ岳の登頂時にアタックザックとして、タープを張った後の山小屋周辺を散策するポーチとして使った。 ただしズボンにポケットがあったため、あると便利・なくてもOK的装備だった。う〜ん…。
 シートゥーサミットのウルトラシルドライサック35L。これは正直、アタリだったのかも。 各社似たような製品を出しているが、別途購入したグラナイトギアのeVentシルドライサック25Lは、71g(ハズレ?)。 今回は雨に見舞われなかったが、キャンプ時に不必要な装備をザックごと入れて足先のマットにすることで、道具を夜露から守り、かつ快適な睡眠を得た。

<宿泊用品>
タープ 【MSR】イーウィング  210g
ビビィサック 【モンベル】ブリーズドライテック U.L.スリーピングバッグカバー ワイド  191g
マット 【サーマレスト】エオエアー スモール  264g
グラウンドシート 【AMK】ヒートシートブランケット  77g
スタッフバッグA 【グラナイトギア】エアバッグ#2  16g (※タープ・ビビィ・マット・シートを収納)
シュラフ 【モンベル】U.L.スパイラルダウンハガー#5  404g
スタッフバッグB 【モンベル】U.L.スパイラルダウンハガー#5 付属袋  22g (※シュラフを収納)
ペグ 【アライ】クロスペグ(×1本)  13g
ペグ 【チタニウムゴート】カーボンファイバー テントステイク(×5本)  35g
ガイライン 【プロモンテ】テクノーラ張り縄  25g                        計1,257g

 MSR イーウィング。確かに、雨でも頭上を守りレインウェアに着替えられる、一人用最低限のタープかも。 自分が下手で不慣れな点を引いても、設営の手間たるやハンパない。早めにキャンプ場に着いて、まず風向き・地形と広さを見る。 山岳テントなら何のこともない風でもバタ付くため、どっちが風上か、ハイマツや岩等の風除けの有無を確認。 そして設営スペースは、一人用山岳テントを縦に2つ並べるくらい必要。 当然ガイラインはピンッと張る。このタープ、手間と工夫を楽しめるかが重要なポイントだと思った。
 モンベル ブリーズドライテック U.L.スリーピングバッグカバーは、ジッパーもない透湿防水性の袋で、 超軽量ビビィとして使えるけどワイドの必要はない。 これは、マットを中に入れられれば?と期待したためで、完全に無理。ノーマルに変えれば10gは軽くできた。 今回は、蝶ヶ岳の蚊・羽虫がウザくバグネット必須と感じただけで風雨は全く問題なし。 虫については、カバーとシュラフをうまく重ね合わせて凌げたし。
 サーマレスト ネオエアースモールは、収納・断熱・快適性を最大限重視しながら最軽量を目指したマット。 さらに軽いものもあるが、キャンプの快適性は妥協にできても、睡眠の快適性を犠牲にすると十分な疲労回復ができない と考えているため、正しい選択だったと思う。
 AMK ヒートシートブランケットを、グラウンドシートとして使用。こんなのでも地面とマットの緩衝材として十分機能した。 今回の失敗は製品のままの大きさで持参したこと。 全身の長さとマットの幅があればいいので、縦走の後半は三つ折りにして使っていた。これ以上広げると便利そうだが、石で押さえても風でバタついてうるさい。 厚みとしては二つ折りで十分だと感じたので、カットすれば20gは軽くできたはず。
 ペグはアライ クロスペグチタニウムゴート カーボンファイバーテントステイクを持っていった。
 クロスペグは重いが、頑丈な点で不満なし。一方のカーボンペグは、スティックペグでは最軽量クラスだが、 長すぎて扱いにくく、岳沢小屋で初宿泊時にペグの頭を踏んで、いきなり折った。 しかも割り箸を折ったくらいの感覚だ。もろすぎる…。 ちなみに高価で入手性も悪い。始めから割り箸でいいのではと思うくらいだ。 さらに北アルプスでは、ペグは打てないキャンプ場が多く、ペグ自体不要ではとも感じられた。
 プロモンテ 2mm径のテクノーラロープをガイラインに使った。 引張強度は3mm径ナイロンロープと同等で、しかも軽いが、ロープとして非常に扱いにくく硬い。 そのため石や地面との磨耗が激しく、入手性も悪いため、無理してテクノーラを使いたくない。 ちなみに自在金具は、自在結びを使えれば不要。

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<ウェア類>
アンダー上 【モンベル】ジオラインクールメッシュ Tシャツ   70g
アンダー下 【スキンズ】RY400リカバリー ロングタイツ  142g
ソックス 【パタゴニア】LW エンデュランスアンクルソックス  32g
アウター下 【コロンビア】マドレーパンツ ハーフ  274g
防寒着 上 【パタゴニア】ダウンセーター  300g
ウィンドシェル 【パタゴニア】フーディニフルジップ  104g
シューズ 【バスク】ブラーSL  730g                              計1,652g

 ウェア類は、すべて上手く機能したと思う。 特にスキンズ RY400ロングタイツ。定評通り、疲労軽減・回復効果は絶大。 軽量化したとは言え山小屋泊1泊しか経験がない自分が無事縦走できたのは、このウェアのおかげ。 登山後に筋肉痛で階段がキツイなんて経験、誰でもあると思うが、それがほとんどなかった。
 あとはバスク ブラーSL。軽量装備だからできる選択でもあるが、このトレイルランニングシューズで縦走には十分だった。 足のトラブルも一切なし。テント泊だとサンダルを持つ方も多いが、トレランシューズはスニーカーと同様に脱ぎ履きが楽。 つまりサンダル不要で、元から軽い靴なうえに荷物も減らせる。
 正解か悩めるのがパタゴニア ダウンセーター。これのおかげで寝袋のグレード #5が選べ、かつ日没後や起床時に寒くなかったわけだが、 選択肢としては薄手のフリースもアリである。

<予備ウェア類>
アンダー上 【モンベル】ジオラインライトウェイト Tシャツ   108g
アンダー下 【モンベル】ジオラインクールメッシュ トランクス  35g
ソックス 【パタゴニア】LW エンデュランスアンクルソックス  32g
スタッフバッグC 【サーマレスト】ネオエアースタッフサック スモール  14g(※予備ウェアを収納)計189g

 ある意味ではなくても全く困らなかった装備群。事実、最終日に上高地へ帰ってくるまで、一度も着替えなかった。 使ったのは、バスの待ち時間に風呂へ入ったあと。つまり大衆(体臭)への配慮である。

<レインウェア>
レインジャケット 【モンベル】ストームクルーザージャケット  392g(※スタッフバック込)
レインパンツ 【モンベル】ストームクルーザーパンツ  252g(※スタッフバック込)
グローブ 【ノーザンフィールド】(商品名不明)レイングローブ  34g
スタッフバッグD 【モンベル】シュラフカバー 付属袋  9g(※グローブとタオルを収納)計687g

 旧式のモンベル ストームクルーザーを持っていったが、今回は一切使わなかったノーザンフィールド レイングローブは、大キレットの岩で軽く傷つけた小指の養生と、日焼け防止、縦走後半に弱まった握力の補助として大活躍。 ただ、グローブを入れたスタッフバッグは何とかなったはず。チャック袋で十分か?

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<調理器具と水筒>
ストーブ 【MLV】トリニティライト  20g
燃料ボトル 【MLV】トリニティライト付属ボトル  21g
燃料ボトル 【プラティパス】ソフトボトル0.5L  20g
風防 【MLV】チタニウムフォイル  15g
カラトリー 【MSR】スポーク  6g
クッカー 【エバニュー】チタンウルトラライトクッカー1  97g
スタッフバッグE 【エバニュー】チタンウルトラライトクッカー1 付属袋  12g
マグカップ 【スノーピーク】チタンシングルマグU  35g
コーヒーケース 【ナルゲン】広口長方形ボトル 125ml  25g
ハイドレーション 【プラティパス】ホーサー2.0L  98g
フラスク 【スノーピーク】チタンスキットル S  62g                      計411g

 アルコールストーブで構成される調理器具群。個人的に完成度が高い。 工夫したのが燃焼効率のよい平型クッカーに、短いスポークを組み合わせた点。浅いので短いスポークでも難なく使えた。 またエバニュー チタンウルトラライトクッカー1は、ハンドルは片方だけに、断熱チューブも外した不必要も甚だしいのがチタンスキットルコーヒー入れ。 重量度外視の遊びも、ほどほどにせねば。
 改善点として、燃料ボトルを1つにできること。なお、2泊3日なら付属ボトルだけでも十分である。
 MLV トリニティライトの付属ボトルは、カーボンフェルトにアルコールを浸透させるために、必要に思える。 しかし、フェルトの体積(アルコール保持量)が同じままプラティパス ソフトボトル0.5L注ぎ口に填め込める カーボンフェルトを自作すれば、付属ボトルは不要になる。これなら余ったアルコールの回収機能が継承でき、 容器の選択肢が増え、かつ超軽量である。
 水筒はプラティパス ホーサー2.0Lだけ。飲料用と炊事・生活用で1L×2コのほうが便利かもしれないが、別段困らなかった。 しかも、北アルプスは大概3時間も歩けば山小屋があるので、2Lも持ち歩く必要ない。昼食では水を使わないから1Lでも十分だった。 ハイドレーションチューブを省けば52g軽くなるが、便利ではなく疲労軽減・水の消費減・行程の迅速化などの機能として、外すことはできない。

<その他の登山装備>
トレッキングポール 【グリップウェル】カーボンスーパーライト  390g
ライト 【ペツル】イーライト  29g
ライター 【ビック】ミニライター  11g
コンパス 【スント】コメット  9g
マップ 【山と高原地図】2010年版槍ヶ岳・穂高岳  33g
マップケース 【ロックサック】OPサック 228×254mm  15g
タオル 【カスケードデザイン】パックタオル・ナノ  16g
ファーストエイド 【Mars】自作ミニキットF  60g
エマージェンシー&ギアリペア 【Mars】自作ミニキットE&G  105g
マルチツール 【レザーマン】スクォートPS4 ナイフレス  56g
スタッフバッグF 【アクシーズクイン】GORE-TEXレインスパッツ 付属袋  12g(※ペーパータオルを収納)
スタッフバッグG 【グラナイトギア】エアバッグ#3 ×2  38g(※アルファ米・乾燥スープ・行動食を収納)
ゴミ袋 【ロックサック】OPサック 228×254mm  15g
熊鈴 【モンベル】キーカラビナ ベルナスカン 5S  12g                     計801g

 意外なほど反省点が少ない。せいぜいペーパータオルの収納袋くらい。 防水袋と期待して外れたので、次回からはクッカーに収納しよう。
ベストチョイスグリップウェル カーボンスーパーライト軽い! 前のレキ マカルーより2本で150g軽いのだが、腕の疲れなさは、明らかな実感度。ロックシステムも秀逸でハシゴ・クサリ場でサッと収納できた。
 ペツル イーライト。おもちゃみたいだが実は堅牢。 もちろん同社ティカ・ジプカにも劣る暗さだが、ナイトハイクします?って話。 山小屋⇔キャンプ場やガイラインの見直しなら、これで必要十分だ。
 ビック ミニライター。フリント式なので高山帯でも確実な着火。 その道のプロ(老舗のたばこ屋)に複数訊いたから、これ以上軽い製品はないことも確実である。
 スント コメットはアクセサリーというに相応しいが、これでナビゲーションに問題なし。藪漕ぎしないし。
 パックタオル ナノは、汗・メガネ・タープの結露を拭き、上高地では体も洗って拭く大活躍。 この大きさで十分だったので、カットして、さらに軽くしようか検討中。
 感心したのがロックサック OPサック。マップケースと、特にゴミ袋として。 防水・防塵は当然だが、タバコの吸殻を入れても、外からは無臭なのは恐れ入った。フィールドごみ袋としては最強では。

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<その他の日用品・計器類>
財布 【シールライン】エレクトロニックケースS  30g
携帯電話 【アップル】iPhone 3GS MC133J  138g
充電器 【サンヨー】エネループ スティックブースター KBC-D1AS  24g
充電池 【サンヨー】エネループ 単三形 HR-3UTGA ×2  52g
充電ケーブル 【???】USB-ドックケーブル  14g
腕時計 【カシオ】オシアナス OCW-T100  87g
デジカメ 【リコー】RICOH R10  196g(※電池・メモリ込)
防水ノート 【オキナ】プロジェクト耐水メモ PW2565  64g
油性ボールペン 【ユニ】パワータンク スタンダードノック式 SN-200PT-10黒  13g
携帯灰皿 【コロンビア】バーレス  14g                             計632g

 ここはほら、日用品だから…なんて言えない。反省点だらけ
 財布はよい。現金・運転免許証・保険証・パスモを持参したが、問題なし。ちなみに、山では10円玉以下は使わないため、持って行かないのが鉄則。 反省点はテレカを持って行かなかったこと。直で電話を貸してくれる山小屋でしか、家族に無事を知らせられなかった。 穂高岳山荘と常念小屋の方には感謝
 登山のためってだけでケータイのキャリア変更はできないが、ソフトバンク(softbank)は、山ではマジで無力。 通じたのは上高地のバスターミナル・河童橋付近までだし、よく下調べすれば不要だったはず。 このための充電機器も一切不要になり、上高地のロッカーにでもデポしてくれば、228gは軽くできた。
 腕時計デジカメも、まだ軽いものはいくらでもある。 なお時計に関しては一家言ある。アナログ式・10気圧防水・サファイアクリスタル風防が最低条件。この中から軽いものを探すのか…。
 ノートペンが意外にも重かった。ノートは不要かな…。 思い出つくりとして、山と高原地図に落書き・日記・感想を書くのが好きなので、これに登山行程も書けるはずだし。
 情けないがコロンビア バーレスがベストチョイス。これは所謂ドラム型と言われる携帯灰皿で、 一般的な袋状のものより頑丈で、吸殻の出し入れが楽なのが特徴。この形状で軽いものを探した結果、 行き着いたのが何とコロンビア。結局アウトドアメーカーなのが笑えた。

<消耗品>
水 1.5L  1,500g(最大)
アルコール燃料  420g(トリニティライトボトルに80g、ソフトボトルに340gほど)
ウィスキー  100g
アルファ米  1,296g(パッケージ込216g×6袋)
乾燥スープ  240g(パッケージ込20g×12袋)
粉末コーヒー  75g
行動食  540g(チャック袋込90g×6袋)
パワージェル 40g
ペーパータオル 【モンベル】O.D.ロールペーパー  32g
タバコ  75g(チャック袋込25g×3袋)          タープ5泊6日行程 計4,318g

 水に関してはホーサー2.0Lの欄で書いたが、傷の洗浄やビパークが起こり得ないわけではないため、 エマージェンシー用途も考えた量を持ち歩く必要がある。キャンプ場では2.0Lの水を入れていたこともあるが、担いだのは最大でも1.5L程度。
 アルコール燃料は、かなり余ってしまった。まだトリニティライトを使いこなしていないため、 どれだけのアルコールで目的の水量を沸騰できるのか、よく分かっていないのだ。 この点を把握すれば、燃料を持つ量を予備も含めて計算でき、アルコールストーブを使うことによる軽量化を極めたことになる。
 アルファ米は、夕食と朝食に100gずつ、乾燥スープを入れてアルファ米雑炊にして食べた。 つまり一泊200gで、予備に一泊分多く持っていった。究極の失敗は、パッケージを含めて持参したこと。 製品パッケージを開封して中身だけを持っていくのは、装備の軽量化における初歩の初歩である。
 行動食は、チャック袋にアーモンド・カシューナッツ・ぶどう糖キャンディーを入れて持っていった。 一袋90gになるよう調節したが、ほぼ全ての日に余りが生じたため、80gでもよかった。 90gはHiker's DepotさんのJMTスールハイク装備を参考にした数値。 しかし今回は、明朝5:30出立→夕立を警戒して14:30着のような、一日の登山時間は7時間程度のスケジュールなので、 カロリー的にも余って当然だったかも。
 モンベル O.D.ロールペーパーは、トイレよりも調理後にクッカーを拭くために多用した。 ただ、これでは水分を含んだゴミが出るため、重い荷物を背負うことになる。 とはいえ、クッカーにストーブ・燃料ボトル・風防・スポークを入れているため、拭かずに入れるわけにもいかない。 調理はOPサックで行う猛者もいるようだが、さすがに抵抗があるなぁ…。

<合 計>
軽量化した?タープ5泊6日装備 計10,713g(スキンアウト) (ベースウェイト 4,572g)

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机上の再軽量化論

 では、反省点を加味してもう一度軽量化したら、どうなるか見てみた。
ボトルケースはポケットで代用 → -56g
グラウンドシートは必要分までカット → -26g
レインウェアは最新式に変更 → -114g
燃料ボトルを1つに統合 → -21g
コーヒーとウィスキーを持っていかない → -87g(中身 -175g)
ペーパータオルの収納袋は撤廃 → -12g
携帯電話と充電機器は登山口にデポ → -228g
時計とデジカメを軽いものに変更 → -100g
防水ノートはマップで代用 → -64g
食料類のパッケージは持っていかない → -200g        再軽量化すると1,083gも軽い

 かなり驚愕の結果である。 レインウェアと時計、デジカメは出費に関係するため除外しても、850gは軽くなってしまう。 晴れの可能性大ならレインパンツは不要とも言えるので、お金も出せば合計で1,300gは軽くなる。 1.3kgって…自立式の山岳テントに匹敵する重さではないか。
 しかも、細かいところはまだまだある。例えば、ブラックダイヤモンド RPMのジッパータブを省略。 ズボンのコロンビア マドレーパンツだって、もっと軽いのは絶対にある。クッカーの収納袋は、ゴムバンドでも何とかなるし、 財布だってタイベックス製で自作すれば…と、まだ先が長い。
 別ページでも述べたが、私は軽量化マニアには全く及ばないアマチュアのウルトラライトだなぁと しみじみ思う。

後記

 とりあえず、この縦走は大成功といってよい。行ってよかった。 穂高や槍なんて、当分自分には縁がないと思っていたし、ましてや「難所」とされる大キレット越えなんて、一週間近い縦走なんて、 下手したら夢で終わっていたかもしれない。
 軽量化を始めたきっかけは、軽い山岳テントが買えないからだが、結局は普通のテント泊並みにお金をかけたかもしれない。 ただ、私の登山経験は浅く、高級装備を持っていないのが幸いした。 テント泊にしても、ツェルト・タープ泊にしても、一からマトモな装備を集めなくてはならない点は、何も変わらなかったためである。 そして、ガチガチのテント泊装備を集めてからでは、逆に「軽量化と言っても、タープじゃなぁ」と、キャンプの快適性を優先していたかもしれない。
 そして、次に繋がる経験をしたと思う。百聞は一見にしかずである。 特に自分の能力、道具の限界、夏山の気象など、経験を伴った知識として身につけられたと思う。 いくら机上で、庭先で、裏山でシュミレーションしようと、縦走の最中に得られる情報と比べれば、紙くずみたいなものなのだ。
 この縦走で感じた手応えから、まだ越えなければならない課題は多いが、 スルーハイクも夢ではなく目標にしてもいいか?と調子に乗ってみたりしている。

参考・引用

・Hiker's depot ホームページ
 http://hikersdepot.jp/
・BE-PAL 340号
 2009年10月10日初版 p19-57 小学館発行


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