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はじめに
ここでは、登山やハイキングでの装備(持ち物)を軽量化する方法や、軽くて実際の山行中に役立つ道具を紹介しています。
端的なものでは
歯ブラシを削るなんて表現がありますが、ここで紹介するのは、市販品をうまく組み合わせて、背負う荷物を軽くしようというものです。
ベテラン登山者というより、
日帰りや山小屋泊の経験を積んで、そろそろテント泊をやってみたくなってきた方や、
はじめの頃に買った登山用品を買い直してステップアップしたい方をメイン対象にしています。
つまり、ここでの軽量化とは熟達すると必ず辿り着く境地ではなく、登山や道具の特性が分かってきたところでチャレンジしたい登山スタイル・道具選びの一方向性ということです。
ところで近年、
ウルトラライトハイキング(ULH)という言葉が使われるようになりました。ULHは、『シンプルな道具で、より自然に親しむ』といった思想的な側面があります。
当ウェブサイトは道具や方法を紹介する場であり、これらの思想面には触れません。そもそもそれを説くほど人間がなってません。
最近では、ウルトラライト(UL)という言葉が一人歩きしている現状も感じます。
もともとULは、アメリカの超ロングトレイルで生まれ育った考え方。例えばPCTなど全行程4,200km超・半年単位の日数(!)が掛かるそうです。
日本の国道1〜4号を鹿児島市〜青森市まで歩いても2,400kmですから、私にとっては最早実感に欠ける距離・所要時間です。
この超ロングトレイルを単年中に歩き通すことを目的に、
必要な手段として紹介されたのがULです。
でも、国も気候も文化も異なるのだから、ULをそのまま
日本に当てはめても無理があるのは当然でしょう。
一方で、程度の差はあっても、
登山装備の軽量化は、日本でも昔から当たり前に行われてきたはずです。
ウルトラライトに一言、日本版と付け加えてしまうと、何ら新しいことではなくなるわけです。
発想と着眼点、特にキッカケはULから頂戴したものも多いですが、ここでは「
軽量化」という言葉を主として使っていきます。
お断り:定義はそれぞれでも、最低レベルの「中級者」にも満たない初級レベルの意見に相違ありません。
こんな考え方もあるという姿勢で参考にしてくだされば幸いです。
<なぜ、登山装備が軽いほうがよいのか>
結果から言うと、登山装備、
背負う荷物が軽いと、本当に楽だからです。軽量化によって得られる恩恵を簡単に挙げてみましょう。
利点1.体力の消耗が抑えられる。同じ体力を消耗するなら、
より早く、より遠くへ行ける。
利点2.コースタイムが短くなる。同じ時間を費やすなら、より慎重に、
より登山を楽しむ時間を多く取れる。
利点3.妥協していた装備を持参できる。同じ重さなら、
より豪華な食事や、カメラレンズをもう一つ持てる。
利点4.動きやすく、
難ルートの危険性が低くなる。より安全へ備えやすく、遭難しにくくなる。
利点5.ひざ関節の負担を減らせ、捻挫等のケガもしにくくなる。
利点6.テント泊縦走などが、
若者の体力勝負や熟達者の世界ではなくなる。
利点7.装備が軽く体力の消耗を抑えられるので、摂取カロリーも少なく済む。つまり携行食が減らせる。
足関節や肩腰に掛かる負担も小さいので、ザックやシューズなども簡略化されたもので十分になる。つまり、
二次的な軽量化によってさらに荷物が軽くなる。
一時間早く出発した重装備の若者を、昼前に追い抜くなんてことは、日常茶飯事となります。
正直言って、ベラベラと利点を挙げてみましたが、ほかにも色々と
筆舌尽くしがたいほど快適です。
登山装備の軽量化には、
感動すら覚える登山の楽しみを、再発見させてくれるヒントがあります。
もくじ
○
軽量化の大原則
○
何のために山へ行くのか
○
ちょっとした経験と技量は必要
○
一般的な登山装備との違い
軽量化の大原則
軽量化を押し進めた登山は、従来のスタンスで装備を固めている方々にとっては「
ただのマニア」「
緊急時対策が疎かで危険」といった印象のようです。
確かに、闇雲に軽さを求めた登山では当てはまることもあるかと思います。しかし正しい軽量化は、道具マニアのものでも、危険を伴うものでもありません。
ここで紹介する軽量化とは、軽い装備を集めて終わるものではありません。その道具選びは、以下のような特徴があります。
・単一の機能で登山装備を選ぶのではなく、兼用して組み合わせる「
システム」として機能させる。
・環境や状況に対する深い読みから、
安全・快適のために、その都度 大胆に装備を変えることもある。
・派生形である
沢登りや岩登りなどの装備やスタイルに近いものも用いる。
・何と言っても登山の主目的である「
自然に親しむこと」を最大限味わえる。
何のために山へ行くのか
登山装備の軽量化、ウルトラライトを突き詰めるためには、
登山スタイルを見つめ直すことが必要です。
あなたは、何のために山へ行くのでしょうか?
まずはここから、改めて考えてみましょう。私の場合は、簡単に言って「山の自然を楽しみに」行っています。「あまりお金を掛けずに」も含まれます。写真こそ撮りますが、コンデジ程度です。
これは多くの方に当てはまると思いますが、どうでしょうか。
この点がもし、「
テント泊したい」とか「
仲間と山頂で食べる鍋が最高」とかだと、
必要最低限の装備は増えます。
前提が「
山へ行って帰ってくること」ではないからです。
また、どうしても譲れないスタイル・「これが出来ないなら山へ行く価値がない」という装備は仕方ないとしても、そこかしこに「あると便利だから」って言葉が存在しませんか?
あと、譲れない要望は、多くとも3つくらいにしておきましょう。
それがないと、本当に登山できないのでしょうか?
<登山装備が重いと言う登山仲間のスタイル(予想)>
1.写真はデジタル一眼レフで撮りたい。
2.山小屋の食事は高いので、いろいろと自炊したい。
3.激混雑の山小屋は嫌だが、天幕なし・フロアレスは抵抗がある。
4.下山後に不衛生なのも嫌。着替えや街着・ウェットティッシュは必須。
<私のスタイル>
1.飲酒・喫煙・写真撮影は嗜みたい。
2.山小屋の食事は高いので、自炊したい。温かいものが食べれればよい。
3.お金がないので、山小屋泊は利用したくない。
以上でしょうか・・・?夜はちゃんと眠られるなら何でもいいし、人様に迷惑かけないなら、着替えなくてもいいし。酒は山小屋で買います。
日の出からスタートするし、「何泊でどこまで」というスピードは一切重視せず、昼前に予定幕営地に着いたとしてものんびり景色を眺めていたり。
また、友人が重いというのも頷けます。ここでいうスタイル、コダワリといってもいいかもしれませんが、重さに繋がらないなら問題ないわけです。
しかし友人と私では、コダワリ以外が同じ装備だったとしても、3kg以上の差が出るのは明白です。
そうそう
重要なことを忘れていました。
これから登山装備を軽くしたいと真摯に思う方は、ぜひ「
人と同じでないと抵抗がある」という
どうでもいい感性を、捨ててください。
悲しいことに、現状では日本の登山は、軽量化に対しての理解と情報蓄積が極めて乏しいです。
多くの人が、決して一つではない「正解」を信じて疑わずに、迎合しているのが日本の登山装備選びです。そんなの趣味って言えるんでしょうか。宗教?
「これだけでいい」というスタイルが決まってくると、
思い切った軽量化がしやすいものです。
逆に優柔不断だと、「
軽いと言っても〜」って、絶対に言い出します。
というか、私が普通の登山装備を集めているときの決まり文句でしたね。
軽量化装備で固めた今となっては、「
高性能でも重さがね」なんて思ったりします。思い切ってみると、意外に快適ですよ。
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ちょっとした経験と技量は、あったほうがいい
「
経験と技量」というと、ベテランの高度なものを連想しますが、ここで挙げるのは、これから軽量化を始める初級者にも有効なもの。
要は軽量化に繋がるための経験と技術です。
特に、環境に対する深い読みを養うために、これから行く山がどんな場所なのか、「
経験としての知識」があることは、極めて重要です。
それが登山にとって必要と言うわけではありません。
あったほうが有利ということです。
必要といってしまったら、だれも初めての山域や季節に行くことべきではないことになります。
初めての時期・初めての山域に足を運ぶときは、それが未知の領域であればあるほど、誰でも装備選びは慎重になります。
私も初めて高山帯・3,000m級の山へ出かけたときは、それが真夏にも関わらず、過剰な装備で行ったものです。これは、普通のことだと思っています。
それが、無積雪期・無降雪期の日本アルプスの経験を幾ばくか積んだ今からすると、
どんな場所か・何が想定されるか・いつどれだけ寒いか・・・が、
ベテランの方々には遠く及ばないことを理解しつつ、一方で何が必要かが分かってくるのです。
代表的なのが、
ウェアの軽量化に役立つことです。例えば、「夏季・日本アルプスの高山帯は、真冬・自宅近郊である」というのが、私の寒さ感覚です。
この感覚に合わせて、レイヤードを踏まえて最低限のウェアを持参しています。
感覚と表現しましたが、標高100m上昇で気温0.6℃下がるとか、他人やガイド本の目安をあてにするより、この感覚を養ったほうがよっぽど有効だと思います。
事実、ふもとで茹るような35℃近い気温だと、標高から計算すると20℃のはずですが、感覚の上で通用しないことも分かってきます。
それには、山域・季節の状況を、いつも自分の感覚や数値で記憶するように心掛けることが重要です。
同様に経験が活きるのが、
余分な食料と水の持たずに済むことと、
どこまで簡略化された装備で大丈夫か判断できることです。
まぁ、これらは
軽量化を実践しながら身につけていってもよいでしょう。
次に、「
軽量化に繋がる技術と工夫」です。これは細々としたものになりがちですが、やはり意外とバカにできないものです。
小さな技術が、ピンチを救うことも、快適を促すこともありますし、結果として結構な軽量化に繋がることもあるからです。
例えば、自在金具と自在結び。3oのナイロンロープを用いてタープ泊したときに、金具が壊れました。このときは、ロープワークの自在結びを覚えていたので、それで代用することに。
結果として、自在結びだけで十分な実用性を感じたので、それからは自在金具自体を持参しないようになりました。
あとは、キャンプ場で装備を整理整頓できれば、4人用フロアレスを本当に4人で使うことができます。
「
一人用テントを1人で使うと狭いから、1人で使うなら二人用がおすすめ」なんていうのは、あまりに幼稚な例かもしれませんが、要はそういうことです。
宿泊用品は、行動中は荷物以外の何物でもありません。つまり、キャンプ場での工夫技術は、わりと簡単に軽量化に直結します。
設営場所を選ぶ目があればタープでも自立式テント並みの耐候性を発揮できますし、雨への対処が適格ならフロアレスシェルターも全く問題になりません。
一般的な登山装備との違い
登山装備のうち、「
超軽量」・「
ウルトラライト」とされるものは、概してクセがあります。
総じて言えるのは、
そのままで快適に使えるとは限らないこと、
使う側に工夫・技量と臨機応変な選択が求められることです。
ただ単に軽さを突き詰めた製品は「ウルトラライト」とは呼ばれません。せいぜい「(条件付き)最軽量」か「軽量」です。
そして、これらの装備は、ユーザーをピンポイントで選びます。
万人向けではないのです。
欲しい人には最高になりえるが、そうでない人には最低にもなりえます。
逆にいうと、一般的な登山装備とは、「一般的」に含まれる全ての登山スタイルに対応できるだけのキャパシティーを持っているわけです。
「何のために山へ行くのか」で述べた通り、ウルトラライト、装備の軽量化のためにスタイルを吟味するのは、こうした理由からです。
一般的な登山装備だと、あらゆる危機対策に備えて山へ行き、沢・岩・雪渓を縦横無尽に動き回り、凝った旨いメシを食べて、プロカメラマンと同等の写真を撮り、テントの中で宴会して、
眠くなるまで娯楽を楽しみ、頻繁に着替えて、下山後に風呂に入って帰る・・・
何も山でやらなくてもいいのでは?今回の登山を全部入りにするつもりか?なスタイルにも、道具としては対応できます。
あなたの体力が対応できるなら、ですが。
すでに一般化していますが、端的な例は
ダウンと化繊の違いでしょう。
ダウンは、重さに対して最もかさばりが大きい(つまり軽くて暖かい)素材ですが、水濡れと湿気に極めて弱いというクセがあります。
この弱さは生易しいものではなく、肝心の暖かさがガタ落ちになる危険性があります。
これに対して、ユーザーには行動中にダウンウェアは着ない・ダウンシュラフは雨と結露にも気を配るといった対応が必要になってきます。
逆に化繊綿は、収納性や重量比の暖かさには劣りますが、水に濡れても暖かさに影響しにくい素材です。
つまり例では、ダウン製品は
ウルトラライト・超軽量で、化繊綿は
一般的な登山装備ということです。
そして、「四季を通じて湿潤な日本では、重くても無難な化繊綿を選ぼう」というのが
伝統的な登山スタイルで、
クセを理解して臨機応変に対応しつつ、「それでも私はダウンを選ぶ」というのが
ウルトラライトな登山スタイルです。
なお、誤解を招かないように補足しておきますが、「ダウン=ウルトラライトなスタイル」ではありません。
ダウンの弱さを他の装備と組み合わせて克服した結果、総重量が化繊シュラフより軽くなることが、このスタイルの趣旨であり醍醐味です。
ただ単に「軽いからダウンを選ぶ」のは、この項の冒頭で述べたように、せいぜい「軽量」であって「ウルトラライト」ではありません。
何となくイメージできましたか。登山において
軽さは正義といわれますが、正義たる軽さとは、一般的な「軽量」までです。
伝統的な登山スタイルもウルトラライトも、
どちらが正しいわけでもないことは念を押しておきたいと思います。
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<このページの注意点>
当ページおよび当コンテンツは、
登山用品の軽量化について書かれています。
ただし私自身、
登山はベテランでもない初級者であり、これらの情報を参考にするのは閲覧者様の自由ですが、
必ず能動的に装備を選んだ上で行動して下さい。
また、当コンテンツの趣旨や姿勢、対象としては、ごく初心者レベルかつ一般的な登山および道具の特性、その選び方を理解しているが、
そろそろ
「自分なり」に向けて一歩踏み出したい方を対象にしており、やや派生した装備選択・スタイルのひとつとして「装備の軽量化」を勧めている、というものです。
よって、私自身が「ごく一般的な登山装備の基礎知識」と判断したものは、コンテンツが冗長的になることを防ぐために、あえて割愛している部分も多々あります。これら初心者向けのウェブサイトは優れたものが沢山あるので、そちらを閲覧してください。