登山装備の軽量化トップ > 軽量化の方法論
背負う荷物を軽くしたいと思う人は、
自分の登山装備が重いと感じたことがあるわけですよね。
では、自分が何キロの荷物を背負っているか、分かりますか?
「だいたい何kg」ではなく、グラム単位で把握していますか?
登山装備をトータルで軽くしたいと思うなら、すべての装備・道具・消耗品の重量を理解することから始めましょう。
もくじ
○
まずは重さを測ってみよう
○
実測値を知るために、デジタル秤で測ろう
○
重さを計ったら、リストにしよう
○
背負う荷物の目安:ベースウェイトという考え方
○
どこから軽くするか
まずは、実際に重さを測ってみよう
メーカーによっては、カタログに製品の重さを掲載していることもありますが、
あくまで目安です。
だいたい登山用品なんて同性能なら軽いほうがよいに決まっている(軽さは正義の法則)ので、メーカーもサバ読んでいる可能性があるわけです。
当然、表示間違いだってあり得ます。カタログ値を鵜呑みにしないで、
実測値で判断しましょう。
特にウェア類はサイズがあるのに、往々にしてひとつしか重さが表記されていません。
例え持っているウェアのサイズがメーカー表記のサイズと同じだったとしても、そもそもサイズの概念が存在しないギアでも、全く同じ製品にすら、重量にはバラつきがあるわけです。
以下に一例として、メーカー公表値と実測値を掲載しておきます。
分類 | メ ー カ ー/製 品 名 | 公称重量 | 実測重量 |
ソロタープ | MSR E-Wing | 180g | 210g |
ショートパンツ | Arc'teryx Palisade Short | 188g | 186g |
シュラフ | mont-bell U.L.スパイラルダウンハガー#5 | 410g | 404g |
上記の例だけを見ると、
確かに違いはあるけど、それほどでもないと感じるかもしれません。しかし、それはとんでもない誤りです。
そもそも登山装備の軽量化とは、最後はグラム単位の軽さ勝負になることは明白です。
軽量化を始めたころは、大胆に装備やスタイルを変更することで、いとも簡単に、劇的な軽量化を達成することができます。
しかし一度装備やスタイルが決まってくると、同機能で軽い製品を探したり購入することが難しくなり、なんだかんだいって「手持ちの装備を軽くする」ことに行きつきます。
それでも、
たかだか数gとバカにできない奥深さが、軽量化にはあります。
その数gを重ねると数百グラムになり、やはり1kgになって、実感できる軽量化とつながっていくわけです。
最初の実測値を正確に知っておくことは、のちのちの
数gを積み重ねるうえで重要な意味を持ってきます。
繰り返しになりますが、兎にも角にも実測値を量るようにしましょう。
実測値を知るために、デジタル秤で量ろう
実際に登山装備の実測値を量るには、料理用でいいので、
デジタル表示の秤を用意しましょう。
料理用といっても結構正確で、1,000gまで1g単位で量れて誤差は±2gか±3gというのが普通です。価格も1,000円強です。
デジタル表示にこだわるのは、
自分の中に潜む甘えを払拭して、現実と向き合うためです。アナログでは、ついつい都合のいい数値を読みがちですので。
さらにストイックに突き詰めたい方は、
高精度なデジタル天秤も入手してみてください。
こちらは0.1g単位で計れて誤差±0.2gとかですが、計測範囲が狭く、価格は高めです。
前者の料理用秤は、一般的な登山小物からバックパックまで広く対応します。計測範囲が2,000gまであれば、登山靴を含めた大抵の装備は計測できます。
後者のデジタル天秤は、細引きロープやジッパータブ、スタッフバッグなど、軽量化を詰めていく際には必需品ともいえます。
これらの秤を用いて、登山用品をひとつひとつ、量っていきます。
すぐに思いつくメインギアから、ウェアはもちろん、スタッフバッグや細引き(ロープ)、
絆創膏1枚たりとも見逃してはなりません。
本当に「すべて」の重さを量りましょう。
登山用品店で装備を買うときに、陳列された中から最軽量のものを選びたいなら、
吊下はかりをオススメします。
吊下はかりは料理用と比べても±10gと精度が悪いです。精度が悪いといっても、同一商品の中で相対的に軽いものを見つけることは可能だと思うので、一考の価値ありです。
何といっても「平らな場所で静置させる」必要がないので、ショップでも素早く扱えるのが利点です。ザック等の天秤皿に載せにくいものにも対応しやすいです。
入手する際は、厳密に計測できる範囲がある点に注意しましょう。まぁしかし、世の中いろんな秤があるものですね〜。
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重さを計ったら、リストにしよう
つぎに、実際に重さを量りながら、
リストにしましょう。この作業も、また重要です。
単にメモでもよいのですが、ギア・ウェアを体系的に並べたリストにしておくと、俄然、軽量化を始めやすくなります。
そして、ぜひ「
一番初めのリストは、保管しておく」ことをオススメします。
もちろん徹底するなら、山へ行くたびにリストを作り、反省点を併記して知識として貯めていくことも効果的ですが、相応の時間とギアの組み合わせを試せるだけの装備が必要です。
以下に、私が軽量化を始める前の登山装備をアップしておきます。
管理者の旧装備リスト:
ダウンロード(PDF,95KB)
装備リストの例:
ダウンロード(xls,48KB)
リストにしてみると、装備の中で意外に重いもの、嵩張るだけで軽いものが分かります。
そして、自分にとっての「必要」が、どれほどの重さなのか、「
贅沢に対する重さ」が分かるわけです。
登山装備の軽量化は、
ここからです。
登山装備を「バックパック類」「宿泊用品」「炊事道具」のように分類して、予算に合わせて重いところから軽量化してみましょう。
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背負う荷物の目安:ベースウェイトという考え方
ウルトラライトハイキングには、『
ベースウェイト』という装備重量を量る方法があり、これを基準として軽量化を考えています。
これは、水・食料・燃料などの消耗品を除いた、背負っている重量を指します。これに衣類やポケットに入っている装備、手に持っている道具は含めません。
ちなみに『
スキンアウト』は、消耗品もウェアも含めた、本当にすべての重量です。
あと『
パックウェイト』は、ウェアは除きますが消耗品を含めた、そのままバックパックごと量った重さになります。
この中で、なぜベースウェイトを基準に考えるかというと、『
登山スタイルを示す重さであり、行程の長さは関係しない』からです。
ベテラン登山者の『
1泊2日でも1週間の縦走でも、それほど装備は変わらない』という表現、よく見ませんか?この装備の重量こそがベースウェイトです。
何といっても、比べやすいのです。前に1泊2日で登山した、一年後に同じ場所を3泊4日。というときに、スキンアウトやパックウェイトでは比べようもありません。
ベースウェイトで考えることで、他人とのスタイル比較や、自分の軽量化達成度を確認しやすくなります。
では、
どこまで軽くすればよいかについて。これは、無積雪期の幕営縦走なら
ベースウェイト4.5kg以下を目安とすることが多いです。
上の旧装備リストでは、ベースウェイト6.5kgでしたが、これは
山小屋泊の装備です。
予想でしかありませんが、このときの私の考え方でテント場を利用する宿泊形態にしたら、
余裕で10kgを超えていました。
購入予定のギアは散々ウィンドウショッピングしたので、断言できます。思い返してみると、結構怖いですね。
ちなみに、「
なぜ4.5kgが目安なのか」については、明確な理由を説明できません。
単純に、本場アメリカで「10ポンド」(=約4.536g)がキリのよい数値だったからではないかとも思えます。
これは10ポンドをウルトラライト、15ポンド(9.1kg)をライトウェイト、5ポンド(2.3kg)をサブウルトラライトと分類していることからも読み取れます。つまり、
あくまで目安です。
同じスタイル・同じ機能性なら
軽ければ軽いほどよいのは間違いありません。ひとつの目標値として、4.5kgを挙げておくだけの話です。
あと私個人の考えですが、一般ルートを通る日帰り登山なら2.5kg、山小屋泊縦走でも3.0kgを目安として挙げておきます。
以下に、この文を書いている時点の装備をアップしておきます。
管理者の自称ウルトラライト装備リスト:
ダウンロード(PDF,103KB)
上のリストで、
ベースウェイトは3.7kgです。キャンプ場利用で5泊6日なのに、
山小屋泊のときより、はるかに装備が軽くなっています。
私の場合は、縦走のたびに装備を見直しています。上記の装備はそれなりに吟味したつもりですが、これでも究極というには程遠く、
反省点は枚挙に暇がありません。
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どこから軽くするか
このページの最後に、
どこから手をつけるかについて触れたいと思います。この手の軽量化は、どうしても
細々としたものになりがちです。
ジッパータブを外した・スプーンをチタンに変えたなど、それはそれで確かに重要ではあります。しかし、ここでは敢えて、
宿泊用品と炊事用品を総入替することをオススメします。
これらは、今までトラディショナルなスタイルを維持してきた方にとって、ある意味「
鬼門」ともいえる装備群です。
ここで思い切ったスタイル変更と挑戦心を身に着けておけば、あとはスンナリです。
抵抗もあるかと思いますが、
いざとなったら山小屋ユーティリティに頼れる装備でもあり、かつ、
歩いているときは荷物にしかなりえない装備です。
そして、登山の安全性は変えず、いともたやすく劇的な軽量化を達成できる装備群でもあります。
ぜひ、自立式テントやガスストーブなど定番からの脱却を目指してください。
なお、バックパックとシューズは、最後に変更しましょう。これらは真に軽量化の恩恵を味わえる最後の装備です。他の装備が重いままバックパックと登山靴を簡略化すると、どうなるかは分かりますよね。
参考・引用
・ウルトラライトハイキング
土屋智哉・著 山と渓谷社・発行
・Hiker's Depot ホームページ
http://hikersdepot.jp/
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<このページの注意点>
当ページおよび当コンテンツは、
登山用品の軽量化について書かれています。
ただし私自身、
登山はベテランでもない初級者であり、これらの情報を参考にするのは閲覧者様の自由ですが、
必ず能動的に装備を選んだ上で行動して下さい。
また、当コンテンツの趣旨や姿勢、対象としては、ごく初心者レベルかつ一般的な登山および道具の特性、その選び方を理解しているが、
そろそろ
「自分なり」に向けて一歩踏み出したい方を対象にしており、やや派生した装備選択・スタイルのひとつとして「装備の軽量化」を勧めている、というものです。
よって、私自身が「ごく一般的な登山装備の基礎知識」と判断したものは、コンテンツが冗長的になることを防ぐために、あえて割愛している部分も多々あります。これら初心者向けのウェブサイトは優れたものが沢山あるので、そちらを閲覧してください。