登山装備の軽量化トップ >
装備別:登山装備の軽量化 >
野外宿泊用品 >
小型タープ+防水シュラフカバー
小型タープ+防水シュラフカバーの宿泊スタイルとは
ここでは、現実的に日本の登山で考えられる最軽量クラスのテント泊(タープ泊)装備である、小型タープ&防水シュラフカバーの組み合わせを紹介します。
写真を見ていただければ分かるかと思いますが、極めて特異的で奇妙に映るスタイルです。
いつでもどこでも、このスタイルで寝られるとは間違っても考えないでください。
ただし、『ただの挑戦心であり、運がよかっただけ』と言われると、それは違います。
登山での軽量化には、「不要なものは持参しない」のは当然ですが、
「状況に合わせた最小限の装備」で行くことも、また重要だと思います。
私がこのスタイルで登山するのは、海の日〜お盆までの安定した気圧配置での夏季高山帯。
雨はそうそう降らないし、大荒れなんて滅多ない、ハイマツ帯より高い地帯なので刺す虫もいないという環境では、これほど移動時に快適な幕営装備はありません。
ちなみに、そこそこ天候が荒れたことはありますが、もちろん大丈夫です。
初期構成とバリエーション例
構成例というか、私の場合を紹介します。
タープ:【MSR】E-Wing(〜2010年販売の旧モデル) 210g
シュラフカバー【モンベル】ブリーズドライテックU.L.スリーピングバッグカバー(ワイド) 191g
シュラフ:【モンベル】U.L.スパイラルダウンハガー#5 404g
マット:【サーマレスト】ネオエアー(スモール) 264g
グラウンドシート:【AMK】ヒートシートブランケット 77g
ドライバッグ:【シートゥーサミット】ウルトラシルドライサック35L 65g
ペグ:【チタニウムゴート】カーボンテントステイク 7g×5本
ペグ:【アライテント】クロスペグ 13g×1本
ガイライン:【プロモンテ】テクノーラロープ 25g
トレッキングポール:【グリップウェル】スーパーカーボンライト 390g
槍穂縦走の反省ページでも述べた、私のテント泊縦走の始まりです。合計
1,712g。
これまで山小屋一泊だけで、あとは日帰り、テント泊経験なし。
知人・店員・ウェブで情報を集め、いざ5泊6日の縦走へ。
<上記以外の構成例>
MSRのE-Wingは、
2010年で絶版なので(2011年から同名別物が販売)、タープ本体は
ガレージメーカーか自作になりそうです。
それだけ、この大きさのタープはあまり市販されていません。
オススメは
Locus Gearのスクエアタープ類(ファンです)。別注でキューベンファイバーも選べるので、
150gを切るタープかも。
モンベルのシュラフカバーは、これが
ベストバイです。少なくとも当ページ執筆時点では、これより軽く高性能なシュラフカバーはありません。
タイベックで自作したブログを見たことがありますが、相当な単純構造なのに250gとか書いてありました。
マットレスは、ザックとの兼ね合いもあるので、好きなタイプを選んでください。エアー型を選ぶなら、グラウンドシートはタイベックをお勧めします。
実際の使用感
MSR E-Wing(旧モデル)とモンベル ブリーズドライテックU.Lスリーピングバッグカバーの組み合わせで390g。
キューベンファイバー製タープなら、
300gを切るシェルターにも成り得ます。
このスタイルで3,000m峰近くの幕営指定地を含めて、もう20泊はしました。
よほどの悪天候(後述)でない限り、このスタイルで降雪も残雪もない季節・場所なら、
十分イケるという確信があります。
最大の利点は、シュラフカバー兼用でシェルター重量390gという軽さのほか、
素で寝ている感覚が最高です。
夕暮れに完璧なガスでも、夜中にガスが晴れるって、結構あります。ふと起きると、いきなり満点の星空。
他にも、月が作る岩稜の陰影やホタルの光、夜の静けさ、虫の音まで楽しめます。大げさにいうと、ナイトハイクせずに夜山を満喫できちゃうわけです。
この醍醐味は、自立式はもちろん、ツェルト・フロアレス・ビビィサック等の
他スタイルでは絶対に味わえません。
また、最も素でビバークに近いスタイルとも表現できます。
そもそも
山でのキャンプとは、体力回復の場です。
オートキャンプならともかく、登山のテント場で
過剰な快適性を求めることは、邪道とも言えるのです。
このスタイルは、タープだけ張って豪雨をやり過ごすことも、停滞時にシュラフカバーに入って岩壁に寄り掛かりながら休息することもできます。
<風雨があっても大丈夫?>
「よほどの悪天候」とは、自立式テントユーザーの設営スピードが、いつもより明らかに遅くなる強風とか。某年8月の五竜山荘です。
台風が来たときにニュースで、強風で傘が壊される映像が流れますが、アレのひどいヤツといった印象でした。
このときは、仲間2人が小屋泊だったこともあり、設営する気も起きずに小屋泊に切り替えました。
ただし、度胸がなかっただけで、テン場の中で適地を探せれば十分寝れたはずです。
なお、ごく短時間ではありますが、ヘリコプターが吹き下ろす暴風の直撃にも十分に耐えられます。
キツイと感じるのは、雨の本降りがずっと続くときです。
少しの雨でも、このスタイルは「
雨宿り」という言葉が一番シックリきます。山小屋の軒下や岩陰があれば、そこに寝る直前まで居ればよいので問題にはなりにくいです。
しかし山小屋から離れた位置に幕営指定地があったりすると、荒天時はルート上での一時停滞がずっと続くようなものなので、人によっては苦痛かもしれません。
そうなったら、ある程度は
割り切った気構えが必要です。
誤解しないように断っておきますが、一度「
寝」に入ってしまえば、
本当の暴風雨(自立式テントが山小屋に駆け込む状況)でないなら、
まったく問題としないだけの耐候性はあります。荒天時の
居住性に問題があるのは否定できませんが、
快適な就眠性能は充分に確保されています。
<寒くないのか?>
よく同幕営地の利用者から聞かれるのが、「
寒くないのか」ってことなんですが、全く問題ありません。
寝てる最中なんか特に。おそらく自立式テントと防水シュラフカバーは、保温性に大差ありません。寒そうならシュラフのランクを変えるのは同じです。
日没後にタープの下で佇んでいるときは、行動着と防寒着を着込んでいるので、やはり問題ありません。
まだ寝ていないときに強風で寒かったことはありますが、レインウェアを着て解決です。
<恥ずかしくないのか?>
なお悪天候だと、
最も悲惨に見えるスタイルでもあります。
某年の南御室小室では、日没前から本降り。樹林帯の谷筋なので、キャンプ場は水が流れる始末。
レインウェア着てマットに座って、ただジッとしてるしかありませんでした。大学山岳部と思しき小僧には、
鼻で笑われましたね。
ただ、
高い耐水圧を誇るフロアでも、床下に水が流れれば浸水は確実です。
日没後に雨は止みましたが、寝る間際になって「テント内がびしょ濡れ」って騒いでいたし。
悪いとは思いましたが、心中は大笑いです。
まぁ奇怪なスタイルなのは認めます。同じ小屋/テント場を利用する方から「
いざとなったら、俺のテントに来い」とか
「
昨晩の大部屋は、『アイツ死なねぇよな』って話で盛り上がった」とか話しかけられることも度々。
道で追い抜いた人には「
昨日、変わった泊まり方をしていた人だ」と呟かれたり。
ちなみに、この手の
ネタで最も恥ずかしくも嬉しかったのは、
両俣小屋での出来事。
設営して小屋前のベンチで休んでいたら、『人違いだったら悪いんですけど』と女性ペアに声を掛けられました。
『もしかして昨年、大天井で…』。話を聞くと、昨年は彼女達も大天井にテント泊して、
今回二人で『前もあんな泊まり方していた人いたよね』『似たことをする人が居るんだ』『いや、まさか〜』と話していたと言います。
何気ないことですが、これだけでも
このスタイルにしてよかったと思いました。
要は、
顔は覚えてなくても記憶に残るほど、強烈なインパクトのあるスタイルってことです。こんなこと、市販品ではまず考えられません。
↑ このページのトップ ↑
<設営には手間が掛かる>
設営の手間たるやハンパじゃありません。
縦走の道中で追い抜いたテント泊装備の人が40分後くらいにテント場に到着し、私より早く設営して休んでいるくらいです。
何度か使えば、慣れで設営スピードは上がりますが、片方をペグダウンして、立ち上げたポールに縛ったガイラインを固定している最中に、ポールが倒れる…ということが頻発。
ポールへガイラインを縛るのは最後でよいわけですが、ある程度使い倒すまで思いつきませんでした。
<設営面積も必要>
日本アルプスの人気テント場では、設営場所が山岳テント用に区画化されていることも多いです。
穂高岳山荘では写真の結果に。狭いなら狭いなりに工夫が必要となります。ただの真っ平なテント場だったとしても、一人用テントの2倍くらいはスペースが必要と考えたほうが無難でしょう。
このときに注意したいのは、第一にタープの解放口を風上に向けないこと。これはタープに限らず、すべてのシェルターやテントで共通の常識です。
次に、ガイラインは強いテンションでピンと張ること。そして、すべてのタープの辺に、均等なテンションが掛かるように調節することです。
これを怠ると、
風でパタパタと五月蠅いです。設営場所が狭いと、工夫すれば設営こそ可能ですが、このテンションを均等に掛けるのが難しくなります。
ちなみに、
耳栓を持つのもアリかと考えています。
<虫対策>
居住性とも関係しますが、考えておきたいのが樹林帯・川辺〜亜高山帯での
虫対策です。
蝶ヶ岳ヒュッテでは、山小屋の隣に池(沼?)がある所為か、
蚊が多かったです。
このときは持参するか迷った挙句バグネットは自宅に置いてきました。予想はしましたが、寝てから唇を刺されて憤慨しました。
試しにシュラフカバーの口を絞り、肌が露出しないように生地を重ね合わせたら、一切刺されませんでした。
「
やっぱ工夫で結構イケる」と思っています。
なお
バグネットを使うなら、帽子の上から被るタイプで十分です。シュラフに頭まで入ったあと、ジッパーから手を出して、緩めたシュラフカバーの上からバグネットを掛けます。
手をシュラフの中に引っ込めてジッパーを閉じ、顔の部分からシュラフカバーとバグネットのドローコードを絞っていけば、何とか装着できます。ただ自宅では可能でも、真っ暗闇の現場では難しいでしょう。
バグネットを被ってからシュラフに入ると、メッシュが擦れて不快ですが、このほうが簡単です。
↑ このページのトップ ↑