Ultra Light Hiking Goods
2014.11.26更新
登山装備の軽量化トップ > 装備別:登山装備の軽量化 > 必需小物1:ライター&水筒

 このページでは、登山用品のうち、細々とした必需品の軽量化について述べています。 装備の組み換えで劇的な軽量化が図れるのは、宿泊・幕営用品(テント)と 調理器具・炊事用品、バックパックが代表格です。 でも、この後に述べるその他の登山用品も同様で、これらの小物もバカにはできません。 これらも上手に道具・装備を選べば、1kgほどの軽量化に繋がってしまいます。

もくじ

ライター (メインの着火器具)
ファイヤスターター (サブの着火器具)
水筒・ハイドレーションリザーバー
ヘッドランプ
・マップ・コンパス
・トレッキングストック・サポートポール
・ファーストエイドキット
・ギアリペアキット


ライター

 たとえストーブを持っていなくても、タバコを吸わないとしても、登山では必ず持参するべきなのが着火道具です。 そして一般的なのは、やはりライターです。でもガスライターは、故障したら修理不可能な「機械」です。 この信頼性について疑問を持つのは大切ですが、普段用としては言わずもがな、いざという時でさえ、おが屑や綿などの火種から、ファイヤースターターで着火するのは厳しいものがあります。 やはり常備するのはライターがよいでしょう。

 登山で使うライターですが、消去法でフリント式のガスライターしか、選択肢はあり得ません。
 まず、燃料のオイルまたはガスについて。オイルライターはオイルが揮発するので除外しましょう。 オイルのほうが低温下で着火性に優れますが、日帰り登山なら大丈夫でも、縦走ではオイル切れを起こさないとは限りません。 ポケットなどに入れて、絶えず体温で温めておけば、ガスでも低音下で着火しにくいことはありません。 大概のガスライターは、視覚的に、あるいは振って音を聞くことで、ガス残量を確認できるのもポイントです。
 次に着火機構について。圧電着火方式とフリント方式があります。 圧電着火方式の電子ライターは、気圧が低い高山帯において、不思議なほど着火性が悪くなります。フリント方式では、このような問題は生じません。 圧電着火の機構そのものは、気圧・気温の影響を受けるものではなく、高山帯で着火しにくくなるのは、あくまでガスが気化しにくくなるため。と説明されることもあります。 理屈ではその通りなのかもしれませんが、実態としてフリント方式のほうが着火性は優れるのが事実です。 どうも「ガスが気化しづらくなっても、フリント方式なら着火しやすい」と捉えるのが妥当なようです。

 さて、なるべく軽いフリント式ガスライターとなると、Bicのミニライターが最高の選択です。CR対応で型番はJ25です。 複数の老舗煙草屋、web掲示板からUL系のショップ店員まで聞いた上での結論です。重さは11g。ただ小さくて軽いだけではありません。 Bicのライターは、世界シェアを持つ使い捨てライターのトップブランドで、その確実な着火性能、故障の少なさや品質の高さで定評があります。 ガスの噴出量を調節するレバーすらないシンプルっぷりですが、使い始めから燃料切れまで、火の大きさはほとんど変わりません。 一般入手可能な実用品では、これ以上のものはないと思われます。


<Bic ライターのシリーズ>
製品タイプ製品名・型番 実測重量  公称着火回数 
 フリント式・ガス  Bic レギュラーライター J26 21.7g3,000回
電子式・ガスBic 電子式ライター J3819.2g1,700回
フリント式・ガスBic スリムライター J2314.2g1,900回
フリント式・ガスBic ミニライター J2511.2g1,400回
※全製品共通: フランス製・無臭性イソブタンガス100%・チャイルドレジスタンス機構搭載

 私自身喫煙者であり、日常でも使っています。こんなに小さいものでもガス容量は十分で、数ヶ月単位の長々期縦走でなければ、登山中のガス欠は考えられません。 一日に5回ほどアルコールストーブに着火するだけなら、半年以上は保つのではないでしょうか。 【参考】J25ミニライター:タバコ15〜20本/日の換算で、2ヶ月ちょうどでガス切れした経験から、約1,000〜1,200回の実用着火回数があることが分かっています。
 余談ですが、市販のライターはチャイルドレジスタンス(CR)機構の搭載が義務化されたことで、随分と毛色が変わりました。 それまでは電子式が主流だったのが、「やたらと押下力が必要」「解除が面倒」ということで、市民権を失いつつあります。 ここで脚光を浴びたのがフリント式。今までと同じ動作で着火できるため、売れ行きが伸びているようです。 Bicのライターがコンビニで見かけられるのは個人的に嬉しい限り。ただ、普通はスリムライターが多いので、ミニライターを探すのは老舗のタバコ屋さんを回ったほうが賢明です。 冬場など手袋では着火しにくいという方へ。BicミニライターのCR機構は、ちょっとした工具で外せます。

 扱う上での注意点は、つねにポケットなどに入れて、体温で温めておくことです。 また、濡らすと火花が散らず着火できなくなります。この場合は、乾燥させれば再び火が着くようになります。 待てないときは、ストーブの火などでライターのガスに引火させ、その火でフリント部分を乾燥させましょう。

 ところで、すでに廃版商品のようですが、ウィンドミルから登山専用ライターとか銘打ったフィールダーやHALといった製品も販売されていました。 高山帯では空気が薄いから、酸素とガスの混合率が平地と異なり、火が着きにくいと紹介されています。 その発想には目を見張るものがありますが、はっきり言って色モノでしょう。3,000m超の山頂でも、Bic ミニライターで普通に着火できるからです。 現物を持っていませんが、ターボ―さんのブログを見ると、 フィールダーは46.5g、HALは86.6gと、絶望的に重い製品なのが分かります。 こんなものを持参するくらいなら、Bicのミニライターをチャック袋に入れていったほうが賢明です。

↑ このページのトップ ↑

ファイヤースターター

 ライターの項で、「故障したら修理不可能な機械」と表現しましたが、それなりに単純な構造であるフリント式ライターでも、故障は当然考えられます。 登山中ではありませんが、ジッポーライターやBicミニライターで、オイルやガスが生きているのに、火付きがわるくなったり、火花が出なくなったりということがあります。 ライターに限らず、登山では、装備に問題が生じたときに何らかの対策を準備しておくべきでしょう。
 とはいえ、故障や破損の話を聞いたこともないところまで備える必要はないでしょう。 調理道具では、クッカーやアルコールストーブ本体の故障は聞いたことがありません。 実際のところ、故障が考えられるのは着火装置なのです。 このリカバリーには、常用のものと同等か、より単純な道具を持参したほうが安全とされています。その理由は、

 1.単純な道具ほど壊れにくく、心身共に疲弊していても機能しやすい
 2.常用とは違う道具だと、同じ故障原因を繰り返す危険性を避けられる
 3.また使い方も違うため、冷静さを取り戻せることもある

 …といったところです。このように考えると、ライターの予備は、同じライターではなく、ファイヤースターターがよいでしょう。 各社からアクセサリー感覚でいくつかの製品が販売されています。 私は、EXOTACのナノストライカーからロッドの部分だけを取り出して、エマージェンシーキットの中に入れています。重さは6gです。 またファイヤースターターには、ロッドを擦るためのストライカーがセットになっています。 このストライカーが、意外にも重かったりします。EXOTACのナノストライカーでさえ、5gほどあります。 ナイフほどでなくても、面取りされていない鋭利な金属部分が必要ですが、これが他の装備でなかなか代用が利きません。 ナイフが一番なのかもしれませんが、そもそもナイフは軽量化に邪魔なので持参しません。 身近なものでいろいろ試した結果、レザーマンのスタイルPSのプライヤー部分に落ち着いています。これは既存装備なので、重量増加はゼロで済みます。

↑ このページのトップ ↑

ハイドレーションリザーバーと水筒

 登山で水を運ぶ容器には、アルミ系ボトルに始まり、ナルゲン系、ハイドレーションリザーバーやポリタンク、ペットボトルなどが様々なタイプがあります。 でも、選択肢は自然とハイドレーションリザーバーに限られてきます。
<各種1.0L水筒の重さ比較(公称値)>
製品タイプ製品名 重量 
真空ステンレスThermos FFW-1000 500g 
飽和ポリエステルNalgene 細口1.0L170g
アルミSIGG トラベラークラシック163g
ポリエチレン EVERNEW ポリタン ECB211 130g
ポリエチレンフィルムPlatypus ソフトボトル1.0L24g
 ポリエチレンテレフタラート(PET) CocaCola いろはす1.0L22g

 表のようになります。なおペットボトルは頑丈なものだと43gほどで、プラティパスの健闘っぷりが分かります。 本来の軽さならペットボトルのいろはす1.0Lが有利ですが、流石にあのペニャペニャっぷりには不安があります。 そして機能性ではプラティパスのほうが圧倒的に優れます。残量を視覚的に確認できる点や、注ぎやすさは同等ですが、荷物の中でもトップクラスの比重を誇る水を、最も背中に近い位置に保持できます。 また水が容器の中でポチャポチャと揺れません。もともとハイドレーション向けの製品なので、水の運搬で消耗する体力を抑えられる構造です。 2gの重量差に対する機能差が大きく、しかも数値の軽さではなく、軽く背負える機能性なので、ここはプラティパスをオススメします。



 数あるハイドレーションパックの中でも、プラティパスは入手性に優れ、軽く、様々なオプションパーツを装着できます。注ぎ口がペットボトルと共通な点も評価に値します。 ここで注意するのは、プラティパスのビックジップSL・シリーズではなく、ホーサー・シリーズから選ぶことです。 ビックジップSLは、名前の通りパック上部がジッパーでガバッと開くため洗浄・乾燥が楽で、ホースを簡単に取り外せ、吸い口にシャットオフバルブが標準搭載されています。 つまり、すべて『便利』のための機能であり、軽量化に際してビックジップSLは不要です。公称重量では、ビックジップSLとホーサーの重量差は55gもあります。

 前のページで着火装置の損壊リスクとリカバリーについて触れましたが、それより水筒の損壊リスクのほうが圧倒的に高いでしょう。 アルミ、ナルゲン、真空ステンレスの各ボトルは、登山中に破損しにくいため、リカバリーを考える必要はないでしょう。 逆にハイドレーションリザーバー系は、エアー系マットレスの項で述べたのと同じように、潜在的に水漏れのリスクが伴います。 まぁエアー系マットレスに比べれば、多少は荒っぽく扱っても大丈夫。そんなに気を揉むことはありません。 私自身、夏期の南北アルプスなど山小屋が点在する状況では、いざというときもペットボトルが手に入るため、予備は持参しません。 これが期待できない状況や、10日以上の長々期縦走では、持ち歩きたい容量の半分の容量のものを持参します。

↑ このページのトップ ↑

<ハイドレーションチューブを付けるべきか>

 これは人によって違うでしょう。好みの問題もありますし。 付けないほうが軽いですが、私は必要な装備だと思っています。 ザックの中で水を入れておきたい場所は、トップローディング型ならメインコンパーメントの上側。 ここへアクセスするまで、ザックを降ろして、雨蓋のバックルを外して、ドローコードを緩めて、大型ザックなら水筒の上の荷物を出す…という所作が必要です。 それに対して、水は少しずつ短い間隔で飲むのが大切。ハイドレーションチューブがないと、これが非常に面倒臭い。 「軽量化のためには、ある程度の手間を楽しまなければならない」というのが私の持論ですが、歩いている最中の手間が増えるとリズムが崩れるし、ザックを降ろし背負うだけで余計な時間・体力を使います。

 なお、プラティパスのホーサーは、バイトバルブ側とチューブが簡単に分離できます。 プラティパスのチューブ(ホース)は、10cmあたり4.3g(外径9.5mm / 内径6.25mm)もあるので、長いと感じるなら切ってしまいましょう。 チューブごと軽いものに交換する手もあります。

↑ このページのトップ ↑

<持ち歩く水の量は、よくよく考えよう>

 ザックの中で一番重いのは水です。このことは、装備の軽量化を進めるうえで、よく考えたほうがよいです。 当たり前ですが、水1Lは1kgもの重さがあります。飲料水を1L余分に持ち運ぶことは、私の軽量化装備に照らし合わせると、結構とんでもない重量負荷に匹敵するのが分かります。
<例1:水1Lは…> ULシェルターを止めて、自立式テントを持参できる
<例2:水1Lは…> 3日分の食糧・行動食・燃料に相当する

 …といった具合です。もちろん、行動中に飲料水がなくなったらシャリバテ以上の地獄ですし、命にも関わります。絶対に避けなければならない事態なのは間違いありません。 でも、それが当たり前すぎて、給水地点に着いたときに『水が大量に余っている』ことに無頓着であってはならないと思います。 やはり、(保険的意味合いを除くと)持参量を間違えたと考えるべきです。 つまり、一日の行程中に山小屋など確実に水を補給できる場所があるときは、そこまでの消費量を鑑みて持参量を決めるのです。

ビバークするのに必要な水の量は? = 私なら、約800ml。
夏季高山帯の快晴で、10時間の消費量は? = 最大約2.0L(おそらく、体質的に一般より少ない)。
雨天や霧のとき、水の消費量は? = 減る。私なら、約1.5L/日。
日陰のある樹林帯や下り坂だと? = 減る。私なら、約1.0L/日。
  ※行程途中に営業小屋があるときは、ジュース類を飲みます。
  ※給水ポイントでは、トイレに行きたくならない範囲で水を飲んでおきます。


 これらは、天候・風の強さ・気温・体質・荷物の重さ・服装などで千差万別です。 でも、縦走中に水の補給ポイントや幕営地に到着したら、必ず水筒の中に余った水の量をチェックしましょう。 それを経験として蓄積し、次の日からでも試すのです。
 2013年縦走で三俣蓮華から黒部五郎岳をピストンしたときは、テント場を経つときに背負った水は800mlです。 三俣蓮華岳の巻き道は日陰だし、黒部五郎小屋を2回も通るため、水は本当に最低限だけ持参しました。これでも余りました。
 翌日、三俣蓮華から笠ヶ岳へは、1.5Lを持参しました。双六小屋で水を汲めることを考えると、出立時は500mlでよかったと反省。双六では水筒の補給は行わず、 結果的に、笠ヶ岳のテント場で設営中に飲んで水筒は空になりました。これは少し危険ですね。

参考・引用

ターボ―さんのブログ  http://plaza.rakuten.co.jp/temaemiso/diary/200811030000/
Bic Japanホームページ  http://www.bic-japan.co.jp/
プラティパス ホームページ  http://cascadedesigns.com/en/platypus/category

↑ このページのトップ ↑





<このページの注意点>
 当ページおよび当コンテンツは、登山用品の軽量化について書かれています。 ただし私自身、登山はベテランでもない初級者であり、これらの情報を参考にするのは閲覧者様の自由ですが、必ず能動的に装備を選んだ上で行動して下さい。
 また、当コンテンツの趣旨や姿勢、対象としては、ごく初心者レベルかつ一般的な登山および道具の特性、その選び方を理解しているが、 そろそろ「自分なり」に向けて一歩踏み出したい方を対象にしており、やや派生した装備選択・スタイルのひとつとして「装備の軽量化」を勧めている、というものです。
 よって、私自身が「ごく一般的な登山装備の基礎知識」と判断したものは、コンテンツが冗長的になることを防ぐために、あえて割愛している部分も多々あります。これら初心者向けのウェブサイトは優れたものが沢山あるので、そちらを閲覧してください。

Copyright(C) 2005-2014 Mars. All Rights Reserved.